第17話 海に間に合った
夏休み直後で、経過も良好だったことから、何とか目菜の水着が無駄に、ならなかった。
初めて、砂浜で、太陽の下で見る彼女の水着姿は眩しいくらいに魅力的だった。大胆なものではなく、どちらかというと、地味で大人しいものだったが、
「着る元のが違うというんだな。」
と思わず思った。彼女と並んで歩くと周囲の羨望の眼差しが痛いくらいだった。ただし、海から出ると直ぐに戻って、上にティーシャツを着る二人だったが。紫外線を気にして、日常、色々なグッズを身に着け、化粧品、美容薬をつけ、ケアを怠らないのに、海岸で目一杯、太陽に肌をさらして、灼こうということの方が二人の理解を超えていたが。まあ、田蛇は目菜の水着姿を見せつけて優越感に浸る喜びはあったものの、それ以上に自分だけのものにしておきたいという気持の方が強かったが。
「どこまでいった?」
悪気はないが、幼馴染みで、悪友で、親友である宵谷に、よく受ける質問が、また飛びだした。
「お前の方こそ、如何なんだ?」
彼は、手のひらを振って、
「激しいキスまでさ。でも、悪いが、お前達のことが心配でさ。」
「?」
その心配の理由というのは。彼は話始めた。
レイプのトラウマというのは、他人には分からないし、体験者だって、皆が同じであるわけではなく、それぞれに異なる。
「例えば、マンガの中には」
美人の女性と結婚したが、セックスできない。セックス恐怖症だと温かく見ていたが、それ以外は100%以上完璧妻だったが、ついに我慢出来ずになかば無理矢理犯すよえにセックスをしてしまう、少し後悔しつつも、少しづつ慣れていってくれるだろうと自己弁護していたが、美人妻に事故を装って殺される。彼女は、義父にレイプされたトラウマがあってという説明的回想で完。
「もちろん、これはマンガさ。でも、インターネットやらで調べたらさ、専門家のカウンセラーでも、被害者を守る女性団体でも、同じことを言ってるわけではないけど、同じ発想じゃないか、というのが結構あってさ。」
田蛇が考えこむと、慌てて、
「興味本位というんじゃなくてさ、心配だからさ。それに、そうではない専門家、カウンセラー、救済団体もあったし。」
「分かっているさ。それに、俺達、一緒に相談に行ったりしてるしさ。」
その時、
「あ~、男二人で何しているのよ!恋人の水着姿をありがたく拝観して、見とれていなさいよ!」
戸奈が、膨れ顔をアップで迫ってきた。彼女も本当に美人で、可愛い、イケメンの悪友と似合いだと心から思った。戸奈に引っ張られるようにして、二人は離れて行った。取り残された田蛇の隣に目菜が座り、
「何を話していたの?」
躊躇したが、全てを話し合うと約束していたのだからと、
「分かった。話すよ。」
「大体、目菜ちゃんばかり見て!私よりナイスバディなのは認めるけどさ。」
「そんなことはないって。」
二人の痴話げんかが聞こえてきた。
「戸奈ちゃんにも心配されたわ。世の中、何が正しいのか分からないわね。」
彼女は、大きな溜息をついて、少し落ち込んだようだった。
「僕としては、君と別れる、君を自分より相応しい男にとか、男を恋人にしろと言うのは偽物だ、と思いたいね。」
目菜が吹き出した。田蛇も笑って彼女の肩に手を載せると、彼女はびくっとして、体を強ばらせた。
「ごめん。」
どちらともなく、謝った。
目菜は、急いでティーシャツを着た。布越しなら大丈夫だが、素肌に触られると、拒否反応がでてしまう。目菜の方から腕を絡めて、ぴたりと寄り添ってきた。素肌の腕が一部触れ合うのだが、これは大丈夫だった。田蛇も彼女の肩に腕をまわして、心なし引き寄せる。幸せそうに、彼女は彼の肩に頭を預ける。
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