第15話 特攻服?特攻隊を侮辱するな…余計なこと言っちゃった
「そこのインポ男には用はないんだよ。あたいらは、そこの淫乱売女に用があるんだ。さっさと、何処かに行ってしまえ!」
彼女の家まで200mくらいのところで、周囲を囲まれてしまった。絵に、漫画に定番で書かれているような不良の服を着込んだ女達が10人以上だった。
「何なんだ?彼女が何をしたって言うんだ?」
震えながら、必死に叫ぶように言い返した。しがみついてきた目菜を庇うように抱き締めたが、半分は逃げたくて、逃げたくて仕方がなかった。
「そうやって、守ってもらう、男を利用するしかない、最低女が。」
「助けてもらった恩を忘れて、あることないこと警察に告げ口した最低女が。」
「あの動画だって、金儲けのために自分でやったんだろう?分かってるんだ!」
「被害者顔して、やられてよがっていた淫乱女だって、みんなが見てるんだ。お前は、いいように利用されてるんだよ、わからないのかい?インポの早漏野郎!」
「もてない男に、一寸触らせて、のぼせさせて利用するのが、その女のやり方なんだよ!お前みたいな、底辺男がそうでもなければ、相手にされるかよ?」
「あたいらが、その女を制裁するんだから、さっさと何処かへ行ってしまえよ。」
「あそこも、足も縮こまったかい?」
一斉に彼女達は笑った。二人は、何がなんなのか、初めは分からなかったが、少しづつ、頭の中でまとまり出した。あの脅迫グループの女達なのだろう。多分、連中から悪いのは目菜という淫乱女だと言い含められて、彼女を制裁しようという気になったのだろう。その過程で彼女らの好む形に話が変形されているらしい。二人には、そう思えた。“でも、どうして制裁なら許されるって?あのマンガがここまで?”
「あたいらの本気はね、こうして特攻服を着こんで決めてるんだよ!」
それがなくても、危ない、怖いオーラがプンプンしている。田蛇は怖くて立っているのがやっとくらいに震えていた。そんな彼の気持は目菜にも伝わって、不安気な目で見上げていた。それでも、そのまま逃げたい、一人だけで、という気持ちを強く感じつつも、彼女を抱き締める力は強くなり、逃げ出しはしなかった。
「特攻服だって?特攻隊を侮辱するな。二十歳過ぎて、不良ごっこなんか恥ずかし過ぎるだろう?」
“しまった~!”と思ったが、おそかった。理由不明に口から出てしまった。
「何だって~!私らの本気を馬鹿にする気か?」
一斉に鉄パイプで殴りかかってきた。二人は一体でつきぬけようとしたが、鉄パイプで打ち付けられて倒れてしまった。倒れた目菜の上から、鉄パイプを叩きつけようとしているのを見て、田蛇は力を振り絞って起き上がり、彼女の上に覆い被さった。鉄パイプは、彼の体に打つ据えられた。
「この底辺野郎!どけよ!」
「犬に打ち据えさせて,自分は逃げるのかよ!」
「お前は単なる盾、道具なんだよ。他のイケメンと、この女は毎日やってるんだよ!」
容赦なく、鉄パイプは打ち据えられた。
「どいて~!あなたが死んじゃうよー!」
彼の下から悲痛な叫びが上がった。“どきたいけど、もう体が動かないんだよ~。”と、目菜が下から田蛇を突き飛ばして起ち上がった。
「やるなら私をやりなさいよ!」
と叫ぶ彼女に、
「被害者面しやがって!淫乱女が!」
「制裁だ!これは制裁なんだからな!」
鉄パイプで叩きつけられる。
「馬鹿!なんでよ!」
田蛇は、渾身の力で起ち上がって、彼女を抱き締めて、また鉄パイプを受け止めた。
「こんの、馬鹿、インポ野郎!売女の代わりの制裁だ!」
「制裁よ。制裁よ。」
“痛いよ~、もう逃げたいよ~。”と心の中で唱えながら、
「付き合いだよ~、恋人の~。」
と訳の分からないことを呟いた。ついに気を失って、彼女に支えられる状態になった時、ようやく助けが現れた。
女達は、色々と怒鳴っていたが、田蛇も目菜も、立っているのがやっとで、何か遠くのことのようにしか感じなかった。
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