第13話 不幸の始まり

 映像は、彼女の顔と結合部分が執拗に映し出されていた。いかにも素人が撮影しているとわかる手ぶれが目立つ、光の具合が酷いものだったが、だれがどうやってレイプされているのかがわかるものだった。

 3度目だが、本当に3度目以上かもしれないが、二人だけど解決しようとしても、かえって迷惑をかけることは明らかなことだったので、すぐに相談した。手紙には、「僕たちは善意で言っているようにいるんだからね、警察に言ったら、かえって公表されて困ったことになると思うよ。君は、そんな恩を仇で返すことはしないよね。そういうことをすると、誰かが義憤で公表するかもしれないよ。」

とはあったが、警察に連絡した。SNSも注視したが、今では公私ともに犯罪防止のため、国際的にも事前にですら、SNS各社は協力をしなければならなくなっていた。勿論、こうした監視網を潜り抜け、短時間でも掲載を勝ち取ることも横行しているが。その上、それを通報するの者が、幅広く拡散する者であることもままあるのだ。中には、こうした犯罪を糾弾する立場の人間が、事例として、そのまま拡散してしまったことすらあった、これはミスともいえるが。 

 ただ、目菜への脅迫は、彼女の住所などを把握して特定していることから、要注意として警察も一応、身辺警護をすることを約束してくれた。何分人手不足で、パトロールの際に注意して行う、緊急時の連絡先を教えてくれることにとどまったが。

 何度か、更なる手紙がきた。

 撮影者は、つき合っている男だよとか、彼氏はレイプ犯とグルだとか、最後は、

「あんたって、露出狂?これが出した方が、公表された方が興奮するの?親切で流されないように努力していたけど、もう止めるね。どうなっても、自業自得だからね。でも、彼氏がDVしていて言えないなら、そう言って。助けてあげるから。」

 この段階で、警察から危ないから注意して欲しいという連絡があった。かなり特定しているようだったが、逮捕までは、まだ一歩だったらしい。というより、彼等に注意すれば、事無きとなる、彼等を犯罪者として前科を負わせるのは好ましくないという主張があったらしい。

「やめろ!」

 そう叫んで、田蛇が目菜の上に覆いかぶさった。その上に、鉄パイプが振り下ろされた。

「ぎゃあ!」

と彼は叫んだ。“骨が折れたよ~。”心の中で情けなく泣いた。

「私に構わず、逃げて!」

 目菜が下から叫ぶ。上から、

「何も出来ない軟弱野郎が粋がっているんじゃないよ!」

「あたしら、お前らバカップルとは覚悟が違うんだからね。殺してやるよ!」

「これは制裁なんだからね!徹底的にやってやるけど、暴力じゃないんだからね!」

“何でこうなるんだよ~。死にたくないよ~。痛いの嫌だよ~。女にやられたら同情されないかな。”

心の中で泣き続けながらも、何度も振り下ろされる鉄パイプの打撃を耐えながら、目菜からどこうとはしなかった。“逃げたいよ~。”と心の中で泣きながらも。

“どうして?”目菜は心の中で叫んだ。レイプ映像が送られてから約半年、解決したと思っていた時だった。

 手紙、メール、メッセージ、SNSを通じた伝言を、二人は無視し続けた。情報は全て警察に通報した。二人も、二人の家族、親戚、友人達もインターネットを監視していた。強迫者は、二人の周囲の人間に直接、二人の中傷を始めた。これに乗って、二人のそれぞれに、電話やSNSで攻撃する連中も現れた。目菜は、かなりショックを受けたが、彼女が言うには、“田蛇がいてくれたから、何とか耐えられた”と言った。言われたことは、黙っていることなく、彼にぶちまけたが。しかし、これで逆に更なる情報、自分達の特定のための。かなりの人間が、二人のために、その中傷を、自分達に告げた連中の情報を提供してくれたからだ。勿論、それも警察に全て提供された。そうして彼らの、その包囲網には気がついてはいなかったが、ことが思った通り進まないことに焦り、遂に、二人の帰り道で襲ってきた。幸い、鉄パイプ等をもってではなかったが。

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