それは安息の日だった。

 猛り、凄まじい力で暴れていた台風の目にすっぽりと入ったような、静かで穏やかでいつまでも心に残るような、忘れることなく心の大事な部分にしまっておくような、後にして思えばそんな一日だった。


 ブッダガヤに来て五日が過ぎた。

 不思議なことだが、人はどんな場所のどんな状況であっても、生活のリズムを一定に保とうとする性質があるようだった。そしてそれは当然ながら人によって色々と違う。

 一日をどう始めるかでさえ違ってくる。

 坂井の場合は起きて身支度をし、朝のお勤めをすませると洗濯をするらしい。丁寧に汚れを落とし、しっかりと絞り、しわを広げて干す。だから奈津の服はいつも清潔だった。

 忠海の場合は他の三人よりも早く起き、朝のお勤めをすませると、かなりの時間をかけて新聞を隅々まで読むらしかった。英語のものとヒンディー語のもの、それにウルドゥー語の三紙を毎日欠かさずに読む。

 奈津はこのところ、笛の練習にいそしんでいる。音が出るようになり、〈サッジェン〉という曲の練習をしていた。どこに行くにも笛を手にしている。

 喬志は坂井が洗濯を終え、忠海が新聞を読み終わったころに目を覚ます。

 忠海の話によれば、朝のお勤めには出ているらしい。毎朝、忠海と坂井が無理やり座らせているそうだ。

 喬志に朝の本堂で経文を唱えた記憶はない。座ったまま眠っているのか。不思議なのはそのまま本堂で目覚めないことだ。ちゃんと自分の足で歩いてベッドに戻っていると忠海は言うが、その記憶も喬志にはない。

 喬志は太陽が昇り、部屋の温度がいつものほうに高くなってから目を覚ます。寝起きは最低で、ハシシの影響のためか恐ろしいくらい生々しい夢の感触に呆然とする。

 しばらくするとリアルな記憶の手触りは、暑さに消される。

 それでも忍がちらつくときには、坂井や忠海はもとより、インド人も家屋で動かない昼過ぎに外へ出る。

 天然のドライヤーともいえる熱風が吹きつける、ハレーションで白っぽく光る土の道をただ歩く。頭蓋骨で脳が蒸し焼きになるくらい歩き回って、ようやくバッド・トリップの影響から抜け出す。それから木陰に入ると、その日最初のクッキーをかじるか葉っぱを仕こんだタバコを吸う。

 世界がクリアになるのはそれからだ。

 最初にやるのはガネスの骨にやすりをかけることだ。それが喬志の一日のスタートとなる。

 その日、喬志がいつものように微量のハシシを使って、光の美しい、多少露出オーバー気味の現実に帰り、いくつかの骨を粉末にして――ガネスの骨はそのほとんどが粉になって風に飛ばされていた――寺に戻ると、忠海たちは出かける準備をしていた。

「どっか行くの?」

「ちょうどよかった。一緒に行くぞ」

 忠海が大声を出す。

「どこへ」

「シッダールタが悟りを開く前に修行したお寺に行くんですよ」

 坂井の目はペットボトルの水や現金を確認している。

「大月さんも一緒にどうですか」

「行ってもいいけど教えてくれないか」

「何をですか」

「シッダールタって誰」

 ゴータマ・シッダールタ。

 マラガ国の王子で後にいう仏陀だ。そのシッダールタが覚醒した場所がブッダガヤだ。

 悟りを開くまでの数年間、シッダールタはこの地で修行していた。六年を苦行で過ごし、六年を楽業で過ごした。両極端な修行を経て、ヒッパラ樹の下でこらまで誰もたどり着いたもののない未知の領域にシッダールタは到達したのだ。

 忠海が歩きながら蘊蓄を語った。

 ブッダガヤから三十分ほどバスに乗り、川に向かって歩いた。

 サリーを着た女性が大きな籠を頭と両手で支え、腰まで川につかり、歩いて渡っている。朱色のサリーが水に濡れ、腰に張りついていた。

「目の毒だな」

 サリーの女を見た忠海はそうつぶやくと、離れた場所から川に入っていく。

 喬志たちも靴を脱ぎ、荷物を水に濡らさないよう注意しながら川に入る。奈津は喬志が背負った。途中で川床の軟らかい場所に足を取られたり、首まで水に浸かって歩いたりしたため時間はかなりかかってしまった。

 そこから先は茶色の大地が果てしなく続いた。道はなかった。忠海が歩きながら経文を唱え始める。

 しばらくすると村が見えた。牛の糞で作った家の並ぶ、その小さな村で寺の場所を聞くことにした。英語が全く通じないため、忠海がウルドゥー語で村人に訊ねる。外国人が珍しいのか、子供たちが目を丸くして喬志たちを見ていた。

「こんな場所があったんだな」

 辺りを見渡し、喬志は思わず言った。ドラッグも、英語も、宗教もない、何もない村。

「ぼくは何も売りつけようとしないインドの人を初めて見ましたよ」

 坂井が興奮したように言う。

「英語の話せる人間は、ここから大通りまで行って数珠を売るんだ」

 忠海がこっちだと言って、歩き出した。

 奈津が後ろを何度か見ていた。振り返ると何人かの子供が少し距離を取りながらついてきている。どの子供も裸足で汚れた服を着ている。インド系特有の大きな目が、真っすぐに喬志たちを見つめている。何かを乞うわけでもなく、話しかけてくるでもなく、ただついてくる。村から離れるにつれ、一人減り、二人減り、最後に五歳くらいの女の子が一人だけ残った。

 一人になったというのに、女の子は帰ろうとするそぶりを見せない。

 忠海が振り返り、大声で何か言った。

「なんて言ったんだ」

「チェロ」

「どういう意味だ」

「帰れに決まっとろうが」

 あんなでかい声をださなくてもよさそうなもんだと思ったが、いつまでも連れてゆくわけにもいかないな、とも思った。

 気がつくと、女の子は村に向かって走り出していた。

 奈津が立ち止まり、女の子の後ろ姿を眺めていた。

 瓦礫の道が麓から頂上に向かって伸びる低い山についたのは、村を出て三十分後、日本寺を出てからは二時間が過ぎたときだった。瓦礫道は途中から石段に変わった。

「あの先に寺院がある」

 忠海が言った。忠海の息は少しも乱れてなかった。

 ゆるやかな、一段の幅が広い階段を登る。急な斜面の頂上、青すぎる空の真下に、寺院の朱色の屋根が見えてきた。

 蒸し暑い空気が充満している。空には少しずつ、雲が増えているようだ。

 境内につくと、喬志は頭に巻いたタオルを取り、ペットボトルの水を顔にかけた。奈津の頭にも水を浴びせてやる。

 しばらく木陰に座りこんだ。麓を見ると乾いてひび割れた大地に、大きな岩がごろごろと転がっている。ちらほらと草木も点在していた。

 その先を眺めてゆくと彼方に地平線が見えた。一本の線が、天と地をわけている。

「喬志」

 忠海に声をかけられた。忠海は石造りのお堂の前に立っていた。

「これからおれはしばらく経を唱える。静かにして後ろに座ってろ」

 お堂は朱色の丸い柱と石の壁で作られていた。壁に木の格子で覆われた小さな窓が四つ開いていた。こざっぱりした、禁欲的な空間がそこにあった。

 正面に金と赤で彩られた曼荼羅が飾られている。

 曼荼羅の前に忠海が座り、経を唱えはじめた。喬志は石の床に直接正座した。たちまち止まっていた汗がふきだした。顎を伝い床に落ちる。横を見ると奈津も坂井も正座を崩していた。喬志は目の前の、忠海の後頭部を睨みつけ正座を続けた。

 仏陀が汗を流した床に喬志の汗が落ちる。忠海の声が響く。

 二十分ほどして忠海の行は終わった。

 外に出るとチベッタンらしい寺の僧侶が木陰に案内してくれた。白いテーブルと椅子が置かれている。僧侶が大きな盆にクッキーと紅茶をのせて運び、それぞれに配ってくれた。

 熱いストレートティーが心地よかった。いくら水を飲んでも癒せない乾きが、嘘のように潤うのを喬志は感じた。

 クッキーはバターがたっぷり効いていて、紅茶によくあった。僧侶はクッキーと紅茶がなくなるたびに新しく追加してくれた。それは喬志たちが満足するまで続いた。

 言葉がわからないからだろうか、僧侶は優しい目を喬志たちから片時も離そうとはしなかった。ティータイムが終わると、お堂の反対側の建物に案内された。同じように石の壁と柱で作られた建物だったが、そこには寺の曼荼羅と仏像が収められていた。

 仏像は木を彫ったものに原色の絵具が塗られていた。曼荼羅にも原色がふんだんに使われていて、そこには世界と時を意味するものが描かれているとのことだった。

 すべてを見終わり、忠海がそろそろ帰るかと言った瞬間に空が光った。

 雨が、前が見えなくなるくらい降ってきた。土の道は機関銃の掃射をあびたようにへこみ、たちまちぬかるんだ。雷が轟く。

 身をかくすひまもなく、喬志はパンツの中まで濡れた。他の四人も同じありさまのようだった。

 気持ちよかった。

 ぐずぐずした暑さが一掃される。

 天を見上げ、全身に雨を浴びた。濡れた前髪が額にはりつき、服が水を吸って重くなる。

 坂井が叫んでいる。奈津が走りまわって全身で喜んでいた。そして足をすべらせて転んだ。

 忠海が奈津のそばに行こうとして、同じように足をすべらせた。坂井はそれを見て腹を抱えて地面に転がった。

 笑っていた喬志の足を忠海が払った。

 喬志はそのままあお向けに寝転び、笑った。どろどろのぐちゃぐちゃになって四人で笑った。

 ただひたすら気持ちよかった。


 雨がやむのを待って、寺を出た。

 帰りのバスは満員で、バスの上に登った。屋根に座りこみ、荷物を固定する柵をしっかりと握る。真っ暗な道をバスがかなりのスピードで疾走する。いい風が吹いた。雨のにおいがした。

 突然、隣のインド人がわめいた。

「伏せろ」

 忠海の鋭い声が響く。

 奈津の頭を抱えて伏せると、頭上を何かが走り抜けた。しばらくして恐る恐る頭を上げて振り返ると、それは道に張りだした大木の枝だった。日が暮れているため、木々は黒い影になっている。その上に月が昇っていた。

 幾度か頭を上下させ、枝をやりすごすと日本寺についた。

 久しぶりの快い疲れと軽い興奮に喬志は包まれていた。外でゆっくりとジョイントを三本吸った。それから残りすべての骨にやすりをかけた。それでガネスの処理は終わった。

 部屋に戻ると、寝ている奈津の横で、坂井と忠海が熱っぽい口調で話していた。

「ぼくはずっと不思議だったんですけど、仏陀が悟ったころに文字を知っている人は今よりもずっと少なかったわけですよね」

「比べ物にならないくらい文盲は多かったろうな」

「そういう人々はお経なんて覚えられなかったでしょう?」

「確かに文字に記さない言葉は消えやすいものだよな。たとえそれが形のあるものであってさえ、必ず形を変え、消えてゆくのだからな」

「そうですよね。だから、どうして仏教が多くの人たちに広まったのかが不思議なんですよ。いや、仏教に限ったことではないんですけどね。せっかく現役のお坊さんが一緒にいるんですから、いつか聞いてみたいと思っていたんですよ」

「喬志は判るか?」

 戻ってきた喬志に目をとめ、忠海が言った。

「パブロフの犬みたいに飯を食わせたとか。葉っぱかもしれんけど」

「馬鹿野郎だな、お前は」

 忠海は頭をふった。

「じゃあ、今度は坂井に質問しよう」

 そう言って、忠海は歌い出した。大昔の流行歌だった。

 坂井が歌のタイトルを言うと、忠海がぱんっと手を叩いて人差し指を向けた。

「それだ」

「どれだよ」

 喬志が言った。

「不思議なもんで、こんな古い歌でも覚えてるもんだ。メロディーを聞いて忘れていた歌が甦ってきたような経験はあるだろう。言葉だけでは記憶に残りにくいけどな、それにリズムとメロディーを与えてやると、つまり歌にしてしまうと格段に覚えやすくなるんだ。キリスト教には讃美歌がある。宗教音楽の発展もそうだな。イスラムは、あれはコーラン自体がとんでもなく美しい詩であり、歌なんだ。コーランは、朗唱するものという意味のアラビア語だ。仏教だってもちろんそうだ。人は、歌を、忘れないんだ。だから宗教は歌なんだと思うよ。ジーザスが歌い、ムハンマドが歌い、シッダールタも歌っている、ような気がおれはする。歌詞もアレンジもアンサンブルも違うけど、元は同じ歌をうたっているんだ。どのボーカルを選ぶかは、選ぶ人間の好みだな」

「もしかして忠海さんは悟りを開こうとしているんですか」

「悟りを見てみたいとは思ってる。たとえばよく言われるように、物は見る角度によって形が違う。だからそれと同じように物の見方によっていろんな考えが生まれる。そんなふうに言ったりする」

 一息ついて、早口で続けた。

「けど、逆の言いかたをすれば、人間は他を把握するのに、どうしても一部分から全体を推測するしかない。そんなふうにも言える。必ず死角ができてしまうからな。悟りってのは資格をすべて排除した視線なんじゃないか、物体がガラスでできてるみたいに見えて――」

 首をふった。

「いや、違う、違うな。うまく言えない。同時に三百六十度の角度から物を見る浸透する視線っていうか。ああ、結局、よく判っちゃいないんだがな。まあ悟りそのものには興味があるな」

 深呼吸してからまた続けた。忠海はよい笑顔を浮かべていた。

「――あるハードボイルド小説で酒について男二人が語り合う場面があるんだ。そこでこんな台詞が出てくる。『……太陽を見るとき、すすを付けたガラス越しに見たりする。太陽をまともに見るのは危険だからだ。それと同じで酒は世の中を見るときに、すすを付けたガラスの役目を果たすんじゃないかと思う。つまり世の中をまともに見るのは危険なんじゃないか』。――すごい台詞だよな。……おれは思うよ。太陽をまともに見るような、網膜を燃やしてしまうような、悟りを得た視線で物を見るというのはそれほどの衝撃を受けるのかもしれない――おれはそれでも悟りを見てみたい。見てみたいな」

 坂井が腕組みをして頷いた。

「なんかすごいですね。現役の人からそういう話を聞くと、単純に圧倒されます」

「そういや、おれも忠海に聞いてみたかったんだけど」

 喬志が忠海の顔を見ながら言った。

「なんだ」

「悟りってのはドラッグを使っても得られるもんなのか」

「無理だな」

「また思いっきり自信ありげに言うんだな」

「無理だからな」

「だけど、あの異常に思考能力が早くなる感覚は馬鹿にしたもんなないと思うけど」

「どんな感じなんですか」

 坂井が好奇心に満ちた目で質問してくる。

「そうだな、普通、日常での思考のスピードが歩く速さだとすると、ジェット飛行機なみのスピードになる。あんまり早すぎて、ちょっと前に考えてたことが思い出せないくらいだ。ブレーキのない車に乗ってるみたいでコントロールできない」

「なんかよくわからないですね」

「試してみりゃいい」

「やめとけ、やめとけ」

 忠海が手をふって言う。

「そんなもんな、単にドラッグがもたらす万能感の一種にすぎんよ。昔、そういう修行をしてた人たちもいたんだ。それこそバケツいっぱいのLSDや山みたいなガンジャを用意して、三日三晩寝ずに続けたあげく、身体を壊したり、窓から飛び降りたりしたそうだ」

「どうして窓から?」

 坂井が聞いた。

「鳥にでもなった気がしたんだろう。ドラッグは悟りにはつながらんよ。それは修羅道に続く道だ。ずっと戦うことを続けなければならない。それが嫌になってもやめることができない」

「そういうもんかね。もしかして遠回しにドラッグをやめるようおれに忠告したりしてる?」

「そんなに親切じゃないから心配するな。それはそうと腹が減ったな」

 忠海の言葉に喬志もうなずく。

「今日は何を食べるかな」

「寺で食えばいいじゃないか」

「もう粥は飽きた」

「あんなうまそうに食ってたじゃないか」

「でも飽きたの。おれは血のしたたるようなステーキが食いたい」

「大月さん、いいものありますよ」

 坂井が満面に笑みを浮かべている。

「実はぼく、昨日、日本の大学生から選別を貰ったんですよ」

「何?」

 喬志が聞く。

「何だ?」

 忠海も聞く。

「これです」

 坂井がザックから取り出したのは、カップラーメンだった。

「うおおおおおッ」

「でかした、坂井。お前は偉い」

「おっさんは坊主だから食べちゃまずいだろ」

「馬鹿、僧侶たるもの禁断の蜜の味も知らんとまずいだろうが」

「くそ坊主」

「意地汚いぜ、喬志くん。ラーメンかあ。久しぶりだ。僧庵時代、先輩の目を盗んでよく食べたもんだ」

「お坊さんってみんなそんなことしているんですか」

 坂井が不思議そうに言った。

「当たり前だろうが。おれの知ってるやつは秋刀魚を焼いて食ったやつがいるぞ。ドーナツ作ったやつもいたしな。先輩だってろくなもんじゃないんだ。チキンナゲットなんか隠れて食い続けて、入山前より太った先輩がいたからな」

「そんなしょうもない話をしながら、物欲しそうな目でおれのカップラーメンを見るな。あんただって持ってるだろうが」

「ちゃんと人数分ありますよ」

 坂井は菩薩のように、マリアのように、慈悲深い笑顔をみせた。

 ある意味で食事はアクセントだった。時間が無限に続くかのような錯覚を起こさせる旅行生活において、昨日と今日、それに明日を区別するのは食事だけだ。昨日と違うものを食べているから今日が昨日と違うのだと認識できる。

 だから坂井も忠海も喬志も、真剣かつ心してカップラーメンを食べた。

 今日という日を噛み締めた。

 それはため息をつくほどうまかった。

 そうして静かな一日は終わった。


 忠海がいなくなったのは、翌日の早朝だった。

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