俺の中の真理の話

 というわけで打ってきましたよ。ワクチン二回目。買い置き食料とヴィダインゼリーと冷えピタも完全備蓄状態で、穴熊一直線を目指しました。冬眠も辞さず、ですね。


 一回目の時よりも受けに来てた人数も多く、年齢層も若めでしたが、相変わらず待ち時間なし。速攻でスタッフさんに案内されて問診ブースへ。二言三言お医者さんと話して、接種ブースへ移動。今回はきれーなおねーさんではなくてベテラン看護師さんでした。


 またこのベテラン看護師さんの注射の上手いこと。ちくりともしませんでしたよ。いや、まじで。正直打ち終わった後に貼る絆創膏みたいなヤツの方が痛かったぐらい。触れたことも気づかないうちに打ち終わっていました。いや、すごすぎる。このテクニック。


 午前中に注射打ったのですが、いつ熱出るかと思ってわくわくしていましたよ。あ、ちょっと不謹慎ですね。言いすぎました。いつ熱出てもいいように準備万端の家に戻ってきたわけです。一緒に受けて来た巨乳も「女の人は二回目で副反応出るっていうからねー」といいつつ夫婦で巣ごもりする気マンマンでした。


 ところが、ですねえ。出なかったんですよ。まったく。一ミリも。まあ、喜ぶべきだとは思うんですが、肩透かし感がねえ。巨乳もぜんぜんへーきな顔してまして。なんとなれば飯作るのサボれるからうれしい、みたいな感じで。さすがにヴィダインゼリーとカロリーメイトの夕食は勘弁してくれよ、と言ったら、「私はこれでいいから。食べたきゃ自分で作れば?」とか言い放たれまして、しぶしぶお好み焼き作って食べましたよ。


 まあ、そんな感じでワクチン接種完了したんですが。


 実は俺、気が付いちゃったんです。


 世の中の副反応で苦しんだ人とうちの妻との違い。


 そう。それはずばり巨乳だということ。ここで俺は仮説を立てました。


「副反応の度合いは乳の大きさに反比例する」


 ひらめいたとはまさにこのことを言うんですねえ。俺は「なあ、聞いてくれ」とソファでアザラシのように寝転がってテレビを見ている妻の足元にケツをねじこんで話しかけます。


「ありさ(仮名)の副反応が出なかったのはその無駄にデカいおっぱいのせいだと思うんだ」


 妻ありさ(仮名)はこの上なく冷たい視線を俺に投げて言い放ちました。


「あほじゃないの? 絶対違うし」

「いや、会社でも知り合いでも巨乳はみんな二回目ワクチン打ってもへーきなんだ。これが真理なんだ」

「あなたの中では、ね」


 そして興味なさそうに再びテレビに見入ったその背中には「これ以上くだらない話で話しかけるな」と書いてありました。


 それだけではくじけない俺は、勢いあまってフォロワーさんのエッセイのコメント欄に書き込んだんです。そしたら秒速で「そんなわけねーし。笑」とコメントが帰ってきて否定されましたよ。


 しかし、俺の中ではこれは絶対の宇宙的真理なのであります。巨乳は世界を救う。素晴らしいじゃないですか。俺は貧乳派ですけどね。


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