不思議な夢を見ました ~その2
わたしはバズーカを打ちまくっている姫の背後から羽交締めで止めにかかります。
「姫! やめてください!」
わたしに腕をつかまれて邪悪な笑みを浮かべた顔をこちらに向けた姫。その顔は……。
「おまえ、ちづるじゃないか!! どうしてここにちづるが!!」
なんと姫の顔は二十年近く前に別れた元カノのちづる(仮名)になっていました。
わたしは夢うつつでしたが、「これは夢なんだなあ」と気付きます。ちづるはおよそ五年おきくらいにわたしの夢に出てきます。サイコと言っても差し支えないぐらい直情径行なヤツだったんですよ。
ただ、まあ、ちょっとひどい別れ方したなあという自責の念があるんで、時たま夢に見ちゃったりするんです。決して未練があるわけじゃないんですけどね。ただこいつが出てきた時点でもう夢であることが確定してるわけです。
「やめろ! ちづる!」
わたしは羽交締めされてもがくちづるからバズーカを取り上げます。体勢的にそんなことできるのか?とか聞かないでください。夢ですから。
「変わってないのね、ゆうすけ。あんたのそういうところ、大嫌い! こんな世界、こうしてやる!」
ちづる(仮名)は妙にリアルな罵詈雑言をわたしに浴びせて、地面を蹴りました。足元の大地が轟音を立てて地割れが広がっていきます。二十年近く昔の痴話げんかに巻き込まれた中世西欧風の城下町、ほんと災難ですよね。ちづるのそういうヒステリックなところも昔のままです。そりゃそうです。わたしたちの時間はもう進むことはないのですから。
ここにきて中世西欧風バトルファンタジーから一気にどろどろの現代ドラマになってるんですが、気にしてはいけません。これは夢なんです。
「なんでそんなことするんだ!! おまえは何を見て、どこに進もうとしてるんだ!! そんなところに俺の居場所があるとでも思ってんのか!!」
一人称ぶれまくりです(笑)。でも気にしたら負け、なんせ夢ですから。でもわたしのセリフも妙にリアル。というか、これ、ちづると付き合ってる間、ずっと言いたかったけど言えなかったセリフなんですよね。なんでこんな夢の中で叫んでるんだよ、と夢であることを自覚しながら第三者的に冷静に突っ込んでる自分がいて笑えます。
「あんたなんかに幸せが来てたまるもんですか。この姫(実際はカクヨムの某作者さんのペンネーム)ごと、そしてこの世界ごと自爆してやるからね。見ておきなさい。これが私の返事。そしてこれが私の生きざま!」
「やめろ!! 姫(実際はカクヨムの某作者さんのペンネーム)から離れろ!!」
わたしはやむなく腰のサーベルを抜き、ちづるに向かって突進しました。いや、魔導士じゃなかったのかよ(笑)。いつどこでジョブチェンジしたのかさっぱり分かりません。
ちづるは手に持った超高性能爆弾を掲げて地面に向かって投げつけようとしています。あれが炸裂すると人類の半分は死滅し、向こう千年は人が住めない土地になってしまいます。一体どんな爆弾なんでしょうね(笑)。
わたしは足を止めてサーベルを構えたままちづると相対しました。世界を護るにはこいつを止めなければならない。でも、相手は人間です。しかも一度は想い合って付き合った仲。魔物と違ってちづるを簡単に斬ることはさすがにできなかったのです。いや、何をためらってるんでしょうね、わたし(笑)。
ちづるが超性能爆弾を両手で持って頭上に持ち上げます。腕を振り下ろせば世界は終わります。
「ふふふ、ゆうすけ、こんどは私の勝ちね。もうあんたに未来はないよ」
ちづるはくちびるを歪めた邪悪な顔でうそぶきました。わたしはまだためらっています。そのとき、一瞬ちづるの顔が緩んで涙目になり、懇願しました。
「ゆうすけ、このままそのサーベルで私を刺して。世界を護るために私を刺して!!」
「姫(実際はカクヨムの某作者さんのペンネーム)!!」
爆弾を頭上に掲げたまま姫(実際はカクヨムの某作者さんの名の想像上の美少女)の様相に戻っています。わたしは覚悟を決めました。
「姫(実際はカクヨムの某作者さんのペンネーム)、姫の名は永遠に歴史に残りましょう。姫だけ逝かせることはいたしません。あの世でお待ちください。すぐにそれがしも参ります」
そしてわたしは八相の構えから姫に向かってふりかぶりました。サーベルはいつのまにかなんか日本刀に、中世西欧風城下町は月明りに照らされた桜の舞う夜の草原に変わっています。急に筆致企画で書いた忍者葉桜の世界っぽくなってます(笑)。
その時、背後から声がかかりました。
「待ちなさい!」
つづく
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