第2話 バ美肉おじさんはドン勝が食べたい!
今回の大会では有名なバトルロイアルゲーム、「
このゲームは序盤に勝敗が決することも多く、運要素も大きいため普段はゲームをしないVの者でも生き残るチャンスがあるために採択されたのだろう。
俺はと言えば、このゲームは
だからこそ、大活躍して優勝をかっさらうことができる自信があった。だが、過度な自信は油断に繋がることを知っている俺は今回のこの大会に対しても入念な準備を進めた。度重なる練習を繰り返し、完璧なエイムを手に入れた。誰よりもこのゲームを極めたと言う絶対的な自負があった。
しかし、人生はそう甘くはいかないのが常である。
2020年夏、してやられたぜ。オリンピック(だった)イヤーは特別だったってか。
ステージは、南国、俺が全く知らないステージだった。
「噓、だろ……」
それまでの努力が無に帰すなんてよくあることだ。俺だって、今まで必死に会社で働いて、汗水たらして頑張って、それが一瞬で……たった一つの配信で……俺の一ヶ月分の頑張りを凌駕する世界に出会った。人生山あり谷ありなんていうけれど、実際そんなものだ。
「いいぜ、やってやろうじゃん!」
これで、条件はフェアってことかよ。どれだけやり込もうと、無意味ですよって魂胆かよ。仄暗い自室で、俺は一人で勝手に盛り上がっていた。カメラの前に映っている中年男性は、この世界では美少女だ。美少女Vtuber
絶対に負けない、超絶美少女ゲーマーなんだ。
南国の島に降り立った途端、辺りに敵がいないことを確認してすぐさま武器の確保を急ぐ。ヴァーチャルの空間なのに、自分があたかもその世界に存在しているかのように感じられる。緊張からか興奮からか、はたまたこの夏の暑さからか手に汗がべっとりと
早く武器を見つけないとと焦る中、たまたま見つけた小屋の中からハンドガンを入手した。どうやら運は俺に味方しているようだった。
「よし、これでなんとか……」
そう一瞬気を抜いた、次の瞬間、
――ドン!
と銃声が鳴り響き、俺の右腕にショットガンの弾が命中した。
「くっ……」
痛くもないはずなのに、幾たびも銃弾なんて浴びてきたはずなのに、大会と言う負けられない状況からか、ズキンと言う重く鈍い痛みを確かに感じた。死角からの必殺の一撃だったが、幸いなことに相手の
一撃で仕留められなかったのを見た刺客が、すぐさま撤退しようとするのを、俺は見逃さなかった。
狙いの定まりにくいハンドガンで必死に、そして即座に、相手の頭に命中させた。ズドンと言う音と共に、ヘッドショットのマークが相手の頭上に浮かぶ。相手は即死で、その場に倒れ込み、骸はすぐさまアイテムボックスへと姿を変えた。
「神エイムきた!」
「さすが!」
「すっご」
など、称賛のコメントがすぐさま流れる。赤色の金のかかったコメントがいくつもあったが、俺はそれを読み上げることなく、
「コメントありがとうございます♡」
とだけ言って、ゲームの世界へと再び身を投じた。
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