とある魔の追憶

第10話



ソレは揺蕩う影のような見た目をしていた。


ソレは名を持っていなかった。


ソレはやがて、幾星霜の時を経て姿を自身の在るべき形を見つけた。


ソレは小さな子供のような見た目になった。


その姿が表す、無知、純粋というように。


ソレは意志を持った。


そして、疑問を持った。


ソレはなんなのか?


ソレはどうしてそこにいるのか、ここにいるのか?


ソレが生まれた意味は何か?


ソレは探した。


自身が一体何なのかを。


自身がナゼここにいるのかを。


ナゼ、生まれたのかを。


ソレは知った。

自分は守るものだということを。


ソレは知った。

«守る為»に自身がここにいると。


ソレは知った。

守る為に生まれたと。


それから、幾万幾星霜もの間それは知恵ある物達を守った。


ある時はこの世界を支配しようと企む邪神から、またある時はこの星を砕く程の威力を持った流星群から。


知恵ある物達は、それを敬い奉った。

そして、それに魔を討ち滅ぼす全ての王という意味で<魔王>と読んだ。


しかし、ある時知恵ある物達の1人がある疑問を言い出した。「あれは、一体何なのか」と。最初はただ、自分たちの持てないような力を持つものに対しての嫉妬だった。

その疑問はやがて、全ての知恵ある物達の疑問となった。

そして、とうとう答えを出した。


「あれこそが、至高の存在なのだ。」


初めは、ソレを殺そうとするもの達や危険とするものたちもいた。


けれど、ソレは自分達に牙を向けなかった。


ソレは自分達を護った。


その事に気づいた。


しかし、それも永くは続かなかった。


とある小国で、秘密裏に召喚がされた。


その小国は、世界を支配し、自分たちこそが上位なのだと知らしめたかった。


だから、嘘をついた。


召喚した者たちに。





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