マリアン2118-HHE、残念な機種
<マリアン2118-HHE(ホームヘルパー・エントリー)>は、
『リーズナブルで気軽に購入できるメイトギアを』
をコンセプトに第一ラボで開発された機種だった。というのも、千堂邸でも運用されているアリシア2305-HHS(ホームヘルパー・スタンダード)には、アリシア2305-HHP(ホームヘルパー・プロフェッショナル)という上級グレードのモデルがあったのだが、機能自体はアリシア2305-HHSでも十分に間に合ってしまったこともあってアリシア2305-HHPの販売が振るわず、在庫となってしまったアリシア2305-HHPをアリシア2305-HHSにわざわざダウングレードして廉価販売することになってしまったという苦い過去を教訓として、
『マリアン2118-HHEだけでも十分に役に立つ』
ように最初から機能を絞って設計されたものだった。けれど、なぜか今度は、上位機種であるはずのアリシア2216-HHSに人気が集中し、やはり販売が振るわなかったのだった。
この辺りの<顧客の心理>というものは、いつの時代も読み解くのが難しいということだろう。後から振り返ってみれば、
『機能を絞り過ぎた』
『忙しい時にはきびきびと動いてくれた方が心理的な負担が少ない』
『安すぎて品質を疑われた』
等々の<理由>も窺い知れるものの、その時点ではもちろん、『ニーズに合致するはずだ』と考えて作られるわけだ。
なのに実際に蓋を開けてみると、アリシア2216-HHSとの販売台数は十倍以上の開きが出てしまい、開発コストすら回収がおぼつかず、当時の第一ラボの主任でありエリナ・バーンズの前任者であった人物がいたたまれなくなってエンターテイメント課に移動を希望するという事態にまで至った<いわく付きの機種>であったりする。
それでも、数は少なくとも売れたのはあったのだ。その一機が、こうして安藤家で今でも運用されている。
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