ライフビルド部ウエディング課、発注する

『しばらく付き合ってやれ』


獅子倉ししくらはそう言うものの、別に宇宙開発部に出向したりするわけじゃない。必要なデータがあればその都度提供するというだけである。


それより今のアリシアの仕事は、


『<ライフビルド部ウエディング課>から発注されている花嫁ブライド仕様のメイトギアの開発のサポート』


であり、そのため、第一ラボに応援に出ている状態だった。


花嫁ブライド仕様のメイトギア>


というのは、要するにウエディングドレスなどをより魅力的に見せるための専用のメイトギアことであり、それが欲しいという要望に応えようとしているところなのだ。生身の人間のモデルを使ってもいいのだが、生身の人間の場合だといろいろ制限もある上にスキャンダルの心配もあり、その可能性がなく使い勝手のいいメイトギアが求められていた。


すでに、


<白百合2139-PB(ピュア・ブライド)(仮)>


という機体の試作機は出来上がっているので、アリシアがそれにリンクして問題がないかどうかのテストを行っているという。


もっとも、コンポーネント自体は、すでに運用されている<白百合2133-WD(ホワイト・ドール)>という、アパレル向けの<マネキン>のそれを流用しているので形になるのは早かった。ただ、


『ウエディングドレス専用のそれで、しかも女性の目にこそ止まるものを』


という注文が実に曖昧でとりとめがないため、ライフビルド部ウエディング課の担当者と共に頭を痛めているところだ。


なお、ベースとなった<白百合2133-WD(ホワイト・ドール)>というのは、<マネキン>とも称されるとおり、<動くマネキン>として販売されているタイプのメイトギアである。動くことのない普通のマネキンに混じってショーウインドウなどで服を着て展示され、必要に応じてポーズを変えたり歩いたりという形で運用される。


それと同時に、動かない時には関節を固定するために専用の機構を備え、靴を模した足の裏には床に固定するためのフックが収納されていたりも。


とにかく、メイトギアとしてはいささか特殊な使われ方をする機種と言っていいだろう。


そのため、一般には基本的に出回っていなかったりもする。何しろ購入するのはアパレル業界のみなので、ニーズ自体が限定的なのだ。


さりとて<メイトギア>の一種であることには変わりなく、ファッションショーなどにも人間のモデルと共に出演することはままある。


そんな<白百合2133-WD(ホワイト・ドール)>のコンポーネントを用いて作られた<白百合2139-PB(ピュア・ブライド)(仮)>は、他のメイトギアにはない独特の<クセ>もあり、リンクしているアリシアも戸惑ったりもしたのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る