相変わらずですね、ここは
こうしてカルクラに来た千堂アリシアだったものの、別に単独で町を出歩くことはしなかった。あくまでクラヒに付き従って、アリシア2234-HHCと同じように自身の役目を果たしただけである。カルクラは、現時点では人口一万人程度の<小さな町>でしかない。正直、クラヒと共に仕事に出掛けるだけでだいたいのことは把握できてしまう。だから、
「相変わらずですね、ここは」
などともつい口にしてしまったりもする。
「まあな。人間なんてのはそうそう変わりゃしねえってこった」
今日も、トラックに乗ってジャンク品を漁りに行く。カルクラからほど近い場所でゲリラと軍の衝突があったらしい。アリシアが軍の無線を傍受したのだ。暗号化さえしていないオープンチャンネルでの無線だった。
と、そういう部分もとにかく緩い。感覚が六百年くらい前で止まっているかのようだ。とは言え、現場ではそれで間に合っているのだろう。パラダイムシフトが行われる様子もない。
そんなこんなで現場に着くと、もうすでに他のジャンク屋も駆けつけていた。実に抜け目ない。逞しい。
と、銃声が響いた。どうやらまだ生きていた者がいたらしい、それをジャンク屋が射殺したのだ。アリシアが止めに向かう暇もなかった。死人に口なし。こうしておけば戦闘で死んだものとして処理される。
軍の新たな斥候が到着する前に根こそぎ搔っ攫うために、ジャンク屋達は熱心に作業を行う。クラヒも、
「お前はこっちの車両から使えそうなものを引っぺがしてこい! 俺はこっちを見てくる!」
アリシアに指示を出して動いた。言われたアリシアの目の前には、横転した軍用車両。戦闘で破壊されたのではなく運転ミスで横転したらしく、目立った戦闘による破損がなかった。流れ弾が当たったかのようなわずかな弾痕がある程度だ。
そこには、軍の装備品の多くが残されていた。が、戦闘後とはいえ、軍の装備品を勝手に持ち去るのは、火星政府が施行している法律ではもちろん違法である。
ただし、この時、現場に残されていたのは、
<軍の装備品であることを示すマーカー>
が発信されているものは一つもなかった。つまり、システム上は、
<軍のようにも見える非正規の武装集団>
でしかなかったのだ。なので、ロボットであるアリシアでも回収できてしまう。かつて、
そしてアリシアは、車両に搭載されていた重機関銃を手早く外し、クラヒが乗ってきたトラックの荷台に積み込んだ。AIによる安全装置さえついていない<骨董品>であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます