アリシア2234-LMN、千堂を見送った後で

ここでせっかくなので、かつて千堂京一せんどうけいいちがULTRA-MANエム・エー・エヌにて救出された後、取り残された千堂アリシア、当時はまだただの、<アリシア2234-HHCの外見を持つアリシア2234-LMNの一機>でしかなかった彼女がどのように過ごしていたかについて、改めて振り返っていこうと思う。




『千堂様……どうかお元気で……』


アリシアは、彼女が放り込むようにして千堂を乗せたULTRA-MANエム・エー・エヌが離脱していくのを、周囲の索敵を行いつつ見送った。戦闘モードはまだ解消されない。千堂が無事に保護されたことが確認されるまでは、解消できないだろう。でもそれは、今の彼女にはむしろ都合がよかった。千堂を乗せたULTRA-MANエム・エー・エヌを追撃されないようにするには、脅威はすべて排除しなければならないからだ。


敵対勢力は、一向に攻撃の手を休めようとはしない。徹底的に戦うつもりなのだろう。ならばアリシアも、機能が失われるまでは徹底的に抗うまで。


彼女に付き従っている<女神の盾>こと<防弾ドローン>は、機能がまだ健全なものは残り十三機。不調ではあるもののかろうじて機能は残っているものは十四機。合わせて二十七機。最初は六十機あったそれらもすでに半分以上を消耗した。


電磁加速質量砲レールガンである<トールハンマー>や、毎秒七百五十発もの三十ミリ砲弾をばらまくMGAU-808ガトリング砲<アヴェンジャー>を防ぐには、ほぼ使い捨てるしかないがゆえに。


すると、アリシアのセンサーに、敵性動体反応、ゲリラが運用しているランドギアだった。アリシアは、ゲリラから奪った<トールハンマー>を掲げ、狙いを付けて、スイッチ。


しかし、反応がなかった。この<トールハンマー>は、欠陥が発見された初期ロットであるため、精々数発しか撃てないのだ。残弾は十分あるのに、バレル側にエラーが出て使用不可となる。


アリシアはそれを躊躇うことなく捨てるが、逆にランドギア側が<トールハンマー>で彼女を狙い撃つ。


右脚は膝から下が破損しフレームが剥き出し。左腕は肩の部分から脱落して失われ、顔の右半分も大きく破損してセンサー類の精度も大きく下がり運動性能もすでに実用限界以下にまで下がってしまっていた彼女には、それを確実に避けることができない。なので、女神の盾である防弾ドローン五機を射線上に並べ、トールハンマーから放たれた質量弾を受け止める。


対物ライフル用の弾丸なら一機で間に合うが、五機を重ねても完全には防ぎきれず、ドローンの機体そのものが破裂するようにして弾け飛ぶ。それでも弾道を逸らすことはできて、アリシアの背後にあった自動車のボディに砲丸大の穴が開いた。


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