千堂アリシア、アルビオンへ
こうしてアンブローゼでの<旅行>を終えた千堂アリシアは、
「次は、<アルビオン>の知人が協力してくれることになった。以前、一緒に仕事をしたことのある人物で、医師だ。
と
「<アルビオン>。確かグレートブリテンをルーツとする都市ですね。古き良きグレートブリテン王国の復古を目指し建設されたと記録にあります」
「そうだ。<グレートブリテン及び北アイルランド連合王国>としてではなく、あくまで<グレートブリテン王国>こそが自分達の祖国であると考える者達が出資し、作られた都市だ。基本的には<七年戦争>で勝利しまさしく<世界一の大国>となった時期こそをあるべき姿と考えているらしい。
もっとも、グレートブリテン王国としては、後にアメリカ独立戦争で敗北しその勢いは衰えたとされているものの、そちらについては考慮に入れていないようだけどね。それもあって、懐古主義と権威主義がないまぜになってかなり混乱したと聞く。
とは言え、『都市一つが丸ごとテーマパーク』だと考えるならアンブローゼと方向性は同じと言えるかもしれない。ただ、正直、治安はあまりいいとは言えないそうだが」
「それでも、人は暮らしているんですよね? でしたらその在り様に触れたいと考えます」
「分かった。それでは先方に正式に依頼しておく。その人物の名は、エドモント・ジョージ・フレデリック。グレートブリテン王国の国王、ジョージ三世であるジョージ・ウィリアム・フレデリックにちなんだ名を持つ彼は、実際にジョージ三世の子孫の一人だということだ。
さりとて、<直系の子孫>と言われている人物は他にいて、彼は傍系ということになってるそうだけどね。ただし、彼自身は自分こそが直系の子孫だと考えていて、それを誇りにも思っている。なので、その点については留意しておいてあげてほしい。公式に直系とされている<ジョージ・アルバート・ウィリアム・フレデリック>の名を出されると気分を害するんだ」
「ジョージ・アルバート・ウィリアム・フレデリック氏は、現在、アルビオンの母体となっている<アルビオン社>のCEOを務めてらっしゃる方ですね」
「ああ、そのとおり。だからどうしても名前を耳にする機会が多くてその度に不機嫌になるというのが、彼と付き合う上において留意するべき点だな」
「分かりました。気を付けます」
それらの留意点を頭において、翌日、千堂アリシアは、エドモント・ジョージ・フレデリックが所有するメイトギア、
<ドロシーmk-6>
にリンクを開始したのだった。
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