ロボットが保存するデータ、その取扱いについて
なお、こうして少女を保護しているということは、少女の姿を記録しているということでもあるものの、主人が一緒にいる時以外の映像や音声については、原則、ロックが掛けられて主人でさえ見ることはできない。データを抜き出すには相応の理由と司法の立ち合いが必要になる。
人間に話を聞くのと同じ程度の概要を聞き出すだけなら問題ないものの、偶発的に記録されることになってしまった映像や音声を悪用されないようにするためである。
後のメイトギアに連なるロボットが本格的に実用化され、映像や音声を常時記録できるようになった当時、<猥褻画像>に当たるものを抜き出してコレクションしたり販売したりした者や、ストーキングなどに悪用した者がいたのだ。
それらについては早々に問題視されて対処され、長く、
『映像や音声を保持する時間は三十分』
といった形で順次消去される形が採られてきた。しかしこうなると今度は、犯罪捜査に協力するために映像や音声を提供してもらおうとしても肝心のそれが残っていないという形で、不幸な結末を迎える事例も相次いだ。
特に、五歳の少女が誘拐され乱暴されたのちに殺害されるという事件があった時には、
『ロボットの映像記録が残ってさえいればすぐに対処できたはずなのに!』
という強い後悔が残ってしまうものだったこともあってか、
『犯罪を未然に防ぎ、犯罪が起こった際にはより多くの証拠を集められるように』
という機運が高まり、
『たとえ持ち主であっても勝手には取り出せないが、必要となれば捜査機関に提供もできる』
といった形に改められていったそうだ。もっとも、それすら最初は、
『権力に悪用される!!』
的な反発も強く、実際に運用が開始されるまでにも十数年。一般に製造されるロボットのほとんどがそれに対応するようになるまでには百年近くの時間を要したそうだが。
これは、技術的な信頼度の確保も必須だったためでもある。素人がロックをかいくぐって映像や音声データを抜き出せてしまうようでは話にならないからだ。
また、単純に、記憶容量の問題もあった。さすがに無制限に映像や音声データを残していくにはストレージの容量が追いつかない。そのため、ストレージの進歩やデータ保存の方式の進歩に合わせる形で、三十分しか保存できなかったものが、一時間、半日、一日、一週間、一ヶ月、一年と増えていき、現在では十年を一つの目安として、主人に直接関係する映像以外は、大まかな概要だけを残し、順次消去する方式となっている。これも、技術がさらに進歩すればデータを圧縮するだけで済ましてそのまま保存していけるようになると見られている。
合わせて、実は人間の記憶そのものを映像や音声に変換する技術も研究はされているものの、そちらはまだ実用的な段階には至っていないそうだ。
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