間倉井好羽、その流儀
こうして
<
自分の人生は自分で作る。だから、自分の死も極力自分で作り上げておく。それが
だから、
そして納骨を終えた数日後、そこに久美の姿があった。いや、違う。
<久美の体を通して墓参した千堂アリシア>
であった。
彼女は、その義務はないもののまだ新しさが残る
「
と告げた。
ロボットは普通、こんなことはしない。ここのような従来型の墓を敢えて用意している家の者が、自分の代わりにメイトギアを墓参に寄越して墓の手入れさせた上で、託したメッセージを読み上げさせるようなことはあるものの、それはあくまで、
<リモート墓参>
であって、ロボットが故人を悼んでいるのではないのだ。けれど千堂アリシアは、自らの意思でそれを行った。
もちろん、診療所の休診日に、もし急患があればすぐに帰れるようにしつつだが。
自身が深く関わった人間が亡くなったことで、
『その必要はない」
と言われても、それでもいてもたってもいられなくなったのだ。人間が敢えてこのような不合理な振る舞いをする理由が、千堂アリシアには分かってしまった気がした。
『胸の中にすごく収まりが悪い部分ができるからですね……』
彼女はそう解釈した。
故人を悼む理由は人それぞれだろうが、少なくとも千堂アリシアの場合はそうだった。
こうして墓参してみると、確かにそれは収まった。
けれど彼女は、まだどこか収まりの悪いものを感じていた。
『タラントゥリバヤさん……』
彼女の胸によぎる名前。そう、<クイーン・オブ・マーズ号事件>の実行犯の一人にして最後の死亡者、
<タラントゥリバヤ・マナロフ>
のことであった。
彼女のことを思い出すと、たまらない気分になるのだ。
同じ<死>であるはずなのに、どうしてこうも印象が違うのか、アリシアは理解できなかったのだった。
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