宿角結愛、多くのことを学ぶ

宿角すくすみ結愛ゆなは、自身の両親や森厳やレティシアの姿をよく見て、そこからたくさんのことを学んでいるだけだった。何気ない日常こそが彼女を作り上げていく。何気ない日常の中にこそ、


<人としての在り方>


としての手本は溢れており、彼女はそこから学んでいるのだ。ゆえに、赤ん坊のように自身の感情ばかりを優先しキレたりすることもほとんどない。彼女は両親や森厳やレティシアの振る舞いから学び、人として成長しているのである。


だからこそ、柔和なように見えて、<人として譲れない部分>については決して譲らないのだ。


<難攻不落の綿飴要塞>


と呼ばれるゆえんである。


彼女の両親も決して完璧でもなければ聖人君子でもないものの、少なくとも自分の至らない部分を詭弁で正当化し誤魔化すようなことをしない人間である。そんなことをする必要もなかった。結愛が学んできたのと同じ素晴らしい<手本>がそこにあるのだから。


間違いを間違いとして認めたとしても決して切り捨てられたりしないことを知っているのだから、それを受け止めることができていた。


加えて、他者を攻撃などしなくても自我を保つことができている両親や森厳やレティシアを見ているからこそ、結愛も他者を傷付けることを良しとしない。


そしてもし、何か嫌なことがあっても、両親をはじめとした身近な者達が一緒に受け止めてくれるから、その憂さを他者にぶつける必要もない。


それが自然とできている家庭だった。


森厳とレティシアも、間近でじっくりとそれを確かめることができた。直接ではなくても自分達に連なる者達が人として穏やかに生きていられていることを確かめることができて安心した。


彼女達なら、第四次火星大戦に繋がるような流れを作らないだろうと実感できた。


同士たる好羽このはの命の終わりを見送り、そしてこれから生きていく結愛の命を見守り、森厳とレティシアは、自分達に残されたわずかな時間を大切に過ごすことを改めて心に誓う。


「あの子を見ていると、喪われた命は無駄ではなかったと素直に思えるな……」


「ええ、本当に……でも、たくさんの命を喪いました。あまりにもたくさんのです……その罪を私達は忘れない……」


「そうだな……」


結愛達を乗せ飛び立っていくフローティングバスに向かって手を振りながら、二人は改めて自分達のあるべき姿に心を馳せた。


好羽このはは自身の命を生き切った。最後の最後まで命を生み出し守ることに執念を燃やした。


ならば自分達もそれに恥じないように生きねばと、二人は思うのだった。


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