秀青、アリシア2234-LMNに語る
そして秀青は、アリシア2234-LMNと共に、
だから、
「お疲れではありませんか?」
アリシア2234-LMNに尋ねられても、
「せっかくこうやって虫の声が聴けるんだ。それを楽しまなくてどうすんだ。今の火星には、地球と大差ないくらいにたくさんの生き物で溢れてる。たった数百年前には微生物しかいなかった火星にだ。
火星本来の環境を破壊することには多くの反対意見もあったらしいが、本来の火星の環境が永久に失われてしまったことには僕も忸怩たる思いがないわけじゃないが、たとえきっかけは人間のエゴに過ぎなかったとしても、今ではもう新たな<自然>が定着してしまっているんだ。いまさら過去に戻そうったって、これだけたくさんの命が根付いてしまって以上は、それをまた人間のエゴで皆殺しにしようなんてのが許されるとは僕は思わない。こうなってしまった限りは、この環境を守る責任が人間にはあると思う。それこそ、地球と違って人間の勝手でこうしたんだからな」
饒舌に語ってみせた。本当に昆虫をはじめとした生き物のこととなると、秀青は熱を帯びる。軍人の家系に育ち、両親も軍の関係者という環境にありながら、彼は軍にはまったく興味がなかった。それにどうせ、彼の従兄弟などには軍に志願を決めている者もいるのだ。ならば
何も負い目に感じる必要もない。
だから改めて、
「アリシア、僕は昆虫や生き物達のことをもっと知りたい。だからその道に進む。お前がもし、お祖父様の意向で、軍に進まない僕には預けておけないということになっても、僕はお前より自分の気持ちを優先する。それだけはあらかじめ言っておく」
きっぱりと断言した。それに対してアリシア2234-LMNは、
「はい。それで結構だと思います。秀青様には秀青様の生き方があります。
こちらもきっぱりと告げた。ロボットだから当然だが、何一つためらうことなく、自分の感情に囚われることなく。感情がないのだから当たり前ではあるものの、冷淡なくらいに。
でもそんなアリシア2234-LMNだからこそ、秀青も信頼することができるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます