千堂アリシア、状況を理解する
「む……詳しく説明を。いや、今、アリシア2234-LMNは傍にいるのか?」
「はい! います!」
「ならば、私のアリシアにデータを送信してもらえるだろうか? 合わせて、その
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「アリシア! 緊急事態だ! 直ちに
と、携帯端末越しに千堂アリシアに告げた。
「承知しました!」
千堂アリシアも状況を察し、言われたとおりに秀青のアリシア2234-LMNとリンクを開始する。それによりわずか数秒で状況のほとんどを理解した。
そしてこうしている間にも秀青達は
「あ、今はまだ!」
びしょ濡れだったことで秀青が出してきたタオルで体を拭いていたアリシア2234-LMNが声を掛けるものの間に合わず、
「先生!」
と言いながら診察室のドアを開けた立志の視界に、ベッドで横たわって腹を出し、ポータブルエコーでの検診を受けていた
「おわっ!?」
さすが自分が大失態をやらかしたことを察した立志が、
「すすす、すまねえ!!」
謝りながら診察室のドアを閉めた。その様子に、アリシア2234-LMNの傍で待機していた秀青も、
『女性の患者さんがいたんだな』
と察してしまって苦笑い。
すると診察室の中から、
「何やってんだい。ロボットだけ入ってくれたらそれでいいんだよ」
「あ、先生! 大丈夫ですか! マジすんません!」
診察室のドアの前で何度も頭を下げる立志はさておいて、アリシア2234-LMNは久美や亜美とデータのやり取りを行っていた。ただ、
「申し訳ございません。私の現在の記憶容量では、術式について保存することができません」
と告げた。それに今度は、
「あ……!」
と秀青が慌てる。
「僕がデータを保存してるからか……!」
そう。秀青が集めた昆虫に関するデータが膨大過ぎて、アリシア2234-LMNの記憶容量を大幅に圧迫していたのである。
すると秀青は、
「く…ああでもいい! 人命が優先だ! 古いデータは削ってそこを使ってくれ!」
すぐに決断する。が、そこに、
「いえ、お待ちください、秀青さん。その必要はありません」
アリシア2234-LMNと声は同じだが口調が違う何者かが秀青の端末を通じて話し掛けてきた、千堂アリシアであった。
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