アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様、挨拶を交わす

こうして休憩所兼ミーティングルームである建物にメンバー全員が撤収したのを確認し、


「それでは今日はこれで終了になります。お疲れ様でした♡」


アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様が笑顔で声を上げると、


「お疲れさんっした~♡」


メンバーらが声を合わせて挨拶を返してくれる。


直後に、アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様の表情がフッと変わった。それまでの屈託のないあどけなささえ感じさせるそれから、穏やかで柔和なそれに。


「帰ったか……」


「こっちのアリシアもいいけど、あの<千堂アリシア>ってのも、可愛いよな」


「そうだな。ちょっとうるさいけどな♡」


「違いねえ♡」


リンクしていた千堂アリシアが帰ったのを察して、メンバーらが言葉を交わす。とても和やかなそれだった。と、


「あ、降りだしやがった」


「早えよ。ったく」


休憩所兼ミーティングルームの建物の窓に雨粒が付き始め、メンバーらが愚痴をこぼす。


「まあとにかく着替えて<バーバリアン>に行くぞ!」


リーダーがそう号令を掛け、


「はいよ~!」


「おっしゃあ! やけ酒だあ!」


メンバーらはそれぞれ帰り支度を始めたのだった。




一方その頃、


「ん? 雨か…?」


宿角すくすみ森厳しんげんが自宅の窓に雨粒が付き始めたのを見て、呟いた。


「ホントですね」


「雨~!」


そう応えた結愛ゆなの父親と結愛ゆなの髪の毛が、明らかに膨れ上がっているのが見えた。湿気が増えるとこうなるのである。


「ははは、相変わらずだな。その髪は」


森厳が二人の姿に目を細める。さらに、


「わしの甥っ子とそっくりだな、髪は。結愛ゆなの髪の色は甥っ子の嫁さんそっくりだが」


とも。


森厳の甥は、結愛の父親の父親であり、結愛の祖父である。その伴侶は結愛の父親の母親であり、結愛の祖母である。その二人の血を確実に受け継いでいるのが分かる。


そうだ、森厳の血を直接受け継いだ息子は亡くなったが、森厳に体に流れている血と同じものは、確かにこの二人にも流れている。なお、森厳の伴侶であるレティシアにも、甥姪がいて、そちらには子も孫もいる。


自分達の直系の子孫がいないというのは寂しさもあるものの、養子達にはやはり子も孫もおり、自分達が生きた証は確かに残っている。


すべてが己の望み通りにはならないとはいえ、それでも叶った望みもあるのだ。


それが人生というものだろう。


そんなことを思いつつ、


「わ~、いっぱい降ってきたね」


窓に張り付いて外を見る結愛が、愛おしくて仕方ない。ただ、


「せっかくだから散歩にでも思ったが、雨がやんでからだな」


少し残念そうにも告げる。すると結愛は、


「うん、分かった♡」


朗らかに微笑んだのだった。


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