アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様、フィールド内を確認する
すでに直径千キロの範囲では激しい風雨に見舞われ、その影響で風が強まり始める。大変な勢いで鉛色の雲が迫るのが、メイトギア課のオフィスの窓からも見えた。
「あちゃ~、今日はデートなのに~!」
恨めし気にそうこぼす職員もいる。そんな中でも、千堂アリシアは、<アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様>とのリンク試験に挑んでいた。ただ、そこで、
「先ほど発生した爆弾低気圧の影響で、アンブローゼの天候も下り坂だそうです。なので、今日のテストは中止とします」
「そうですね。こちらでも急激に気圧が下がってきました。天候が崩れる傾向が認められます」
アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様(千堂アリシア)が、迷彩服に身を包みゴーグルとヘルメットを着け、<ガンスリンガーMk-9>と呼ばれる大型エアガンを抱えたまま空を見上げて、口にした。
「よーし! じゃあみんな、撤収だ! <バーバリアン>にやけ酒あおりに行くぞ~!!」
アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様が練習に参加していたサバイバルゲームチームのリーダーが声を上げると、
「うい~っす!」
「いいとこだったのにな~っ!」
などと声を上げながらメンバーが撤収を開始する。中には、それこそブッシュと一体化していてまるでブッシュそのものが動き出したかのように突然姿を現す者もいた。<ギリースーツ>と言われる特殊な迷彩装備をまとったスナイパーだった。アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様がしてやられたのも、そのうちの一人だった。
「お疲れ様です!」
自分をスナイプしたメンバーを見付けてアリシア2234-HHCアンブローゼ仕様は声を掛ける。
「……」
相手は<スナイパー>になりきっている状態だったからか言葉も発せず小さく親指を立てただけで、休憩所へと歩いていった。
それに対してアリシア2234-HHCアンブローゼ仕様も親指を立てて応えて、残っている者がいないか、ここまで封印してきた<メイトギアとしての機能>をフル活用して確認した。
赤外線カメラや集音マイクを用い、体温や心音すら逃さずキャッチする。そうして誰もフィールドには残っていないのを確認し、メンバーらが集まった休憩所へと彼女も向かう。
このアリシア2234-HHCアンブローゼ仕様は元々、このチームの所有物であり、マネージャー的な役割をこなしていた機体であった。
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