千堂アリシア、サバイバルゲームに参加する

『いくつもの都市を経由してメイトギアの遠隔操作を行う』


それを行う際の<ラグ>をいかに解消するかというのが、今回の課題だった。僻地などにも、都市部と変わらない高度な医療を提供するために。


これは当然、地上だけでなく宇宙なども視野に入れたものである。現在、宇宙ステーションなどでも十万人を超える人間が仕事をしており、それらには当然、医師なども派遣されているものの、残念ながら宇宙ステーションなどの特殊環境で医療に従事してくれる医師の確保は、地上に比べると非常に厳しいものがあった。


なので、そういう場所で勤務している医師が体調不良などで休業せざるを得なくなった時に、交代で勤務してくれる医師を募るのも時間がかかることもあるのだ。


こうなるとやはり、遠隔医療に頼らざるを得ないのだが、ここでもまた、地上からのそれでは無視できないラグが生じ、難しい処置などの場合には患者を地上に移送する必要なども出てくる。


現状では解決の難しい問題とされているが、だからといって放置しているだけではいつまでたっても解決しない。現時点では問題解決の糸口すら掴めていなくても、努力しなければ何も始まらないのもまた事実。


ゆえに今回、千堂アリシアの協力の下、そのための研究が始まったということである。


とは言え、これだけに従事するわけにもいかず、あくまでスケジュールを組んで、様々なタスクの一つとして対処する形にはなるが。


で、今、アリシアは、JAPAN-2ジャパンセカンドから一万キロ以上離れた都市、<アンブローゼ>において、いわゆる<サバイバルゲーム>の真っ最中だった。


無論、遊んでいるわけではない。<アンブローゼ>に拠点を置くサバイバルゲームチーム、


<ラビットマン>


の実戦形式の訓練に参加することで、データ収集を行っている状態である。


ちなみに、現地で実際に参加しているのも、アリシア2234-HHC(現地仕様)だった。現地仕様というのは、それぞれの販売地のニーズに応じて若干の仕様変更が行われていたりするもので、アンブローゼ仕様は、


『胸と尻が五パーセントサイズアップされている』


というものである。その辺りが売れ筋なのだ。


しかし、


『胸が邪魔です……』


千堂アリシアとしては少々、不満げだ。元から約コンマ一秒のラグがあるのに加え、千堂アリシアとしての体との誤差を常に補正しなくてはいけないので、余計に時間がかかるのだ。


実は、ただのリンクによって千堂アリシアが制御するだけなら、細かい部分については<アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様>自身に任せてしまえばいいのだが、今回はあくまで、


<千堂アリシアの体>


として運用する形になっているのだった。


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