カップラーメンの男、何者かに命を救われる

カップラーメンの男は、デジタルシャッターの僅か一コマ分にしか捉えられなかったそれに険しい表情になった。


「くそっ! まさか軍用メイトギアか……!?」


正体について推測する。


警察なら、特殊部隊でもない限りこんな形で踏み込んではこない。メイトギアやレイバーギアを盾にしてまず投降を呼びかけるはずだ。そもそも、自分がここに潜んで見張りをしてることを警察が掴んでいる様子もなかった。


だとすれば、軍がメイトギアないしアームドエージェント辺りを投入した可能性があるものの、そちらだとしても早すぎる。軍に対する陽動も今のところ効果を発揮しているからだ。


「何が起こってるんだ……?」


男が混乱しそう呟いた時、


「!?」


今度はこちらの部屋の窓に気配があり、男は咄嗟にドアを開けてさっきの部屋へと戻った。だが、今度は勢いをつけすぎて止まれず、


『しまった……!! ヤベえ!!』


踏み込んではいけない位置にまで、つい体が入り込んでしまった。窓に向けて設置してあった<ブービートラップ>に自らが引っ掛かってしまったのだ。


『畜生!!』


自分が仕掛けたブービートラップに自分が引っ掛かるという最大限の<間抜け>をやらかした自分を呪う。そして、男をカメラに捉えたトラップが作動、ピストルクロスボウが矢を放ち、男の首に見事に命中した。


しかも、首に矢が刺さったことでパニックを起こした男がさらに足をもつれさせて前へと体が泳ぐ。するとさらにトラップが作動、ピストルクロスボウが立て続けに矢を放った。


が、それは男には届かなかった。男の前に差し出された腕に命中したものの刺さることはなく跳ね返されて宙を舞い、しかも男の体に覆い被さるように何かが現れ、続けて作動したピストルクロスボウの放った矢をやはり弾き返した。


そして、男を庇った<それ>はトラップの範囲外の床に男を寝かせ、首に刺さった矢を確認、太い血管や気道には刺さっていないもののそのままにしておいては首の中で止まったやじりがそれらを傷付ける可能性があったので、慎重に、しかし手早く一気に引き抜いた。


「がっ!?」


男は声を上げたが、体が押さえ付けられていたので動けない。男が視線だけを動かして<それ>を見ようとしたが、十分に視界に納められず、ただ、指を口に当てて、


『静かに』


というジェスチャーをしていることしか分からなかった。


それは、男の手足を拘束した後で首の傷の止血を行い、袋に入っていた新品のタオルを開封して傷口に当て、さらにタオルで縛って固定する。けれど同時に口と目もタオルで塞いで、


「動かないように。そうすれば命に別状はありません」


と囁いて、トラップが作動しても意に介さず、いや、おそらく、警官等が駆け付けた際に被害が出ないようにとすべてのトラップをわざと作動させて、部屋を出ていったのだった。


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