岩丸ゆかり、兄に同行する
などということはまるで関係なく、
地球のアメリカ合衆国の州の一つである<オクラホマ州>が主体となって開発されたニューオクラホマは、かつては<田舎>などと揶揄された時期もあったオクラホマ州が、最先端技術の発信地とするべく威信をかけて作り上げた都市だった。
そのため、地球のオクラホマ州とはかけ離れた印象を持つとされていた。
<摩天楼>とも呼ばれる、高さ三百メートルを超える超高層ビル群を中心として周囲へと手を伸ばすようにビルが広がっていくその様は、まさに圧巻の一言だろう。
それでいて、外周部には広大な田園風景も広がり、火星でも有数の農作物の生産拠点となっていた。
中心部と外周部との印象の落差も、このニューオクラホマの特徴である。中心部には緑も少なく、文字通りの<コンクリートジャングル>の様相を呈し、それを補うかのように、外周部は緑に覆われているのだ。
そして、外周部のさらにその先には<海>も備え、海洋リゾートのメッカともなっている。もちろんその海は、人工的に作られたものであり、地球のカスピ海とほぼ同等の広さがあった。名を、
<ザ・ビッグ(偉大なる海)>
という。
ちなみに、
「なんだよゆかり。みんなと一緒じゃないのかよ」
ニューオクラホマの空港に到着し、さっそく別行動へと移った岩丸家だったが、長男の英資と長女のゆかりは、<メイトギアショー>の会場へと向かうバス乗り場にいた。
兄の問い掛けに、ゆかりは、
「お兄ちゃんを一人にしとくと何するか分かんないから……!」
睨み付けるようにしてそう言った。
「なんだよもう。子供扱いすんなよ」
まるで母親のように口煩いゆかりに、英資はうんざりとした様子で不満を口にする。
しかしその時、
「……?」
彼が、何かの気配でも察したかのように視線を人混みの中へと向けた。そうしてしばらく見詰めた後、
「……気のせい……かな……?」
と呟く。
見覚えのある人影がいたような気がしたのだ。
「? お兄ちゃん…?」
不意に<軍人>としての表情を見せた兄に、ゆかりも驚いていたのだった。
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