ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳
プロローグ
しかし彼は、任務に忠実で優秀な軍人であると同時に、メイトギアに対して非常に強い執着を見せる、いわゆる<マニア>でもあった。
そんな彼の近頃のお気に入りは、<スミレ2237-PA>。
開発、導入が行われたのはすでに数年前からでありつつ、その前のモデルである<スミレ2109-PA>が、彼のようなマニアの大部分からは大変不評だったこともあり見向きもしなかったのだが、最近、自宅近くに<スミレ2237-PA>が配備されて、街中で現物を見掛けたことで評価が一転。
「イイ! これはイイものだ!!」
と、手の平を返すに至ったというわけだ。
WEBカタログを見る限りではあまりぱっとしない印象だったものの、実際に人間が暮らす街中に置いてみると、
『地味なように見えて実はなんとも言えない華やかさを秘めている』
のだそうで、
まさに、
<野に咲く一凛の可憐な花>
なのだと言う。
対して、前のモデルは、目鼻立ちがはっきりしすぎていて、
『ケバい』
『バタくさい』
『大昔のマネキンみたい』
『<不気味の壁>以前にタイムスリップした』
と散々な言われようだった。
開発者としては、
<凛々しく毅然とした、美しさの中にも強さを秘めたデザイン>
と意気込み、実際に警察の上層部からは高評価だったそうなのだが、それ以外の<市場の反応>としてはそうだったと。
いや、
とは言え、警察としても、マニア以外の市民からさえ、
『警察官らしくない』
『意識高い売春婦みたい』
とまで言われては、路線変更するしかなかったらしい。
で、地味でどこにでもいそうな、でも実際にはなかなかお目に掛かれない、
『よく見れば美少女だ!』
的な顔立ちの<スミレ2237-PA>が開発されたということである。
そして、
『身近にいそうでなかなかいない』
という<スミレ2237-PA>のキャラクターが、
実になんともな話である。
まあ、
同じ理由で、彼は、<アリシア2234-HHC>も好きなのだった。
さりとて、<アリシア2234-HHC>は、<スミレ2237-PA>に比べれば、
<はっきりと美少女寄りのデザイン>
ではあるのだが。
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