千堂京一、ニューオクラホマに出張する
「今度、ニューオクラホマに出張することになった。なので、アリシアはどうする?」
ある日、リビングで寛いでいると千堂がそう尋ねてきた。
「え? もちろん、私も行きます!」
千堂アリシアは、間髪入れずにそう応える。が、
「では、<特別開発チームの主任>としての仕事については、遠隔で続けることになるな」
千堂に言われて、
「あ……」
となった。
そう、彼女は今、メイトギア課の<特別開発チームの主任>なのである。ゆえに、そちらの仕事も当然ある。
「
「は、はい、そうですね」
アリシアは調子を合わせたものの、実は完全に<特別開発チームの主任としての仕事>の方は失念していたというのが本当のところである。
とは言え、メイトギアである彼女は、これまでにも、
ただ、都市をまたぐほどの遠隔でのリンクとなると、それぞれの都市のファイアーウォール越しになり、その影響で若干のタイムラグが生じることは分かっている。リンクのためのデータのやり取りが不正なものでないかをチェックされるからだ。
時間としては百分の一秒以下のごく僅かなものだが、それでも、機体同士の同調の面では最終的に〇.一秒程度のラグが生じてしまうことはよく知られている。
そのため、僅か〇.一秒のラグが命取りになるようなシビアな運用には適していないというのが現在の課題であったりもする。
「でもまあ、特別開発チームの主任としての仕事の方は、今の時点だとそこまでシビアなものも予定されていないからな」
そんなわけで、再び、アリシア2234-HHCとのリンクにより同時運用を図ることとなった。
「おはよう、アリシ……ア?」
朝、出社してきたエリナ・バーンズがアリシアに挨拶しようとして、なんとも言えない違和感に戸惑った。
「ひょっとして、HHC?」
問い掛けるエリナ・バーンズに、
「はい。現在、アリシア2234-HHCとリンクしています」
<アリシア2234-HHCにリンクしている千堂アリシア>が応えた。
普通は区別はつかないものの、<千堂アリシア>を毎日見ている者には、<違和感>として違いが察せられてしまう場合もあるようだ。
「どうして…って、あ、そうか。千堂さんの出張に同行する?」
察したエリナ・バーンズに、アリシアも、
「はい。その間、アリシア2234-HHCで勤務します」
平然と答えたのだった。
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