ナニーニ、人間達を見る
そうして
「家宅捜索令状が発行されました」
覆面パトカーに備えられた専用のプリンターで印刷された<家宅捜索令状>を手に、声を掛けてくる。今は、捜索令状も電子化されているものの、一応はこうして紙に印刷し提示するのが通例となっている。
手続き上は、電子的に発行されたものを提示すればいいのだが、紙の令状を提示された方が納得する者が多いのだと言う。
それが事実かどうか千堂は知らないが、現場の刑事がそう言うのならそういうものなのだろうとは、思う。
こうして四人は再び、<もてぎ荘>へと向かった。今度は<家宅捜索令状>があるので、強制的に踏み込むことも可能である。そのための<応援>もこちらに向かっている。家宅捜索令状を示してもなお抵抗する者も中にはいるからだ。
千堂やアリシアは、正直、そのような強制的なやり方が好ましいとは思えないものの、二人は司法手続きの専門家ではないので、口出しはしない。
しないが、あの女性がこれでさらに意固地になってしまう可能性については、考えずにいられなかった。
と、四人が<もてぎ荘>の出入り口である<ふぁっしおん・もてぎ>に辿り着いた時、
「え? ナニーニ……?」
アリシアが小さく声を上げた。見れば、確かにナニーニが<ふぁっしおん・もてぎ>へと入っていく。
ここもナニーニのいつもの<巡回路>に含まれていたということか。
それに続くようにして、刑事がまず、入り口をくぐった。けれど、
「また来たのか! もう来るなと言っただろうが!」
怒声と共に、何かが刑事達に叩きつけられる。
非常に小さな、そして大量の、結晶の粒。
<塩>だった。塩が投げつけられたのだ。
実はもうこれだけでも<公務執行妨害>として対処することも可能なのだが、さすがに刑事達もそこまで強硬な手段は取りたくないらしく、ただ耐えていた。その上で、
「持木さん。我々は<家宅捜索令状>をお持ちしました。これを提示の上、捜査への協力をお願いに上がったんです。協力していただけないのであれば、我々は令状に基づいて捜索を実行しなければなりません。ご協力をお願いします」
と告げる。だが、大家の女性も、当然のように承服できない。
「はあ!? 今度は強制ときたか! お前らは本当にどこまでも汚い!」
ひたすら声を荒げる。
すると、店内の隅にふてぶてしく佇むナニーニが、そんな人間達の様子を、ただじっと見詰めていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます