千堂一行、出直す

『お前ら警察はいつだってそうだ! 人を犯罪者と決め付けて、土足で踏み付け、人生を滅茶苦茶にする! 汚らしい犬畜生めが!! どうしてもって言うんならここで土下座しろ! 床に頭をこすりつけて懇願しろ! それができないんなら帰れ!!』


大変な剣幕でそう捲し立てた女性に、刑事達も対処のしようもなく、この場は一旦、引き下がるしかなかった。


「すいません、まさかここまでとは……」


「先に連絡を入れた段階では、渋々ながらも協力いただける感触だったんですが……」


刑事二人は恐縮しつつ千堂に頭を下げた。


「いえいえ、私の仕事でもよくあることです。当たりをつけてから実際にことが動き出すまでの間に状況が変化して先方の態度が変わるということは。


どこでも同じですね」


柔和な表情で応える千堂に、刑事達もホッとした様子だ。<都市としてのJAPAN-2ジャパンセカンド>に駐在している警察組織は、地球の日本から派遣されている形であり、<JAPAN-2ジャパンセカンドの職員>ではないものの、それでも千堂のような重役クラスの人間に睨まれると活動がスムーズに行かなくなる可能性があるのも事実であり、良好な関係を保つことが望まれているというのも事実だった。


ただしそれは、一歩間違えると<癒着>と言われるようなものにもなりかねないので、あくまでも節度も求められるのだが。


「少し時間は早いですが、昼食にしながら今後の対応を協議しませんか? この近所に、昼の時間は定食も出す居酒屋があるんです。もちろん酒は抜きですが」


「そうですね」


千堂の提案で、四人は昼食をとるべく移動した。


『あ、やはり……』


『昼の時間は定食も出す居酒屋があるんです』という千堂の言葉を聞いてアリシアが連想したとおり、一行が訪れたのは<牛だるま>であった。


「いらっしゃいませ~」


あの時の女性店員が出迎えてくれるが、はっきりとアリシアを見たものの特に気にしている様子もなく、千堂達を席に案内し、水を出してくれた。


「それでは、注文が決まりましたらお呼びください」


言いつつ、再びちらりとアリシアを見るが、やはり何も言わない。アリシアシリーズを連れている客など珍しくもないので、刑事二人が一緒なこともあっておとなしく普通のロボットのフリをしている今の千堂アリシアが<あの時のアリシア>であるとは考えないのだろう。


こうして、千堂は<焼きサバ定食>を注文し、刑事二人は共に<親子丼>を頼んで、注文の品が来るまでに、


「取り敢えず、午後にもう一度、お願いに上がって、それでも駄目なら日を改めるとしましょう」


「やっぱり、そういうことになりますか……」


刑事達ではなく千堂が主導して、対応を決めていったのだった。


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