ジョッシュとファ、本物の<天賦の才>の持ち主
そう、ジョッシュは、ラウルを『見下した』のだ。
身長ではせいぜい百二十センチ程度しかないであろうジョッシュが、身長百八十センチを超える、しかも、魔術用のローブをまとったことでさらに大きく見えるラウルを、間違いなく見下していたのである。
その態度がまた、ラウルの感情の炎に油を注ぐ結果となった。
「ガキぃッッ!!」
激しい
自分を見下し蔑む憎たらしいその顔に。
が、そんな隙を、アリシアが見逃すはずもない。ましてや、幼い子供に害意を向けるようなテロリストの。
ドン!と地面に叩きつけるようにして足を踏み出し、その反動と自身の体重の全てを乗せた掌底を、ラウルの顔面に叩きつけた。
瞬間、ラウルの体が綺麗に宙を一回転する。
まるで、立てたバットの上部を別のバットでフルスイングしたかのごとくに。
普通なら、顔面の骨が粉砕され、陥没してもおかしくない一撃だった。
なのに、アリシアの手には、骨が砕けるような感触はなかった。確実に捉えたはずだったのにも拘らずだ。
ラウルが、衝撃の瞬間、魔術をアリシアの手に叩きつけて、威力を相殺したのだろう。その上で、自ら体を浮かせてさらに威力を受け流したのだ。
途方もない反射速度である。
しかも、回転しながらアリシアの顔面目掛けて<針>を放つ。
まったくもってとんでもない。
さりとて、アリシアの方もそんなことでは怯まない。顔を捻って<針>を躱して間合いを取り、ジョッシュの方を確認した。
無事であることは察した上で、念の為にだ。
すると、彼女が察したとおり、平然とジョッシュもファもそこにいた。ジョッシュがまた抗魔術で<針>を消し去ったのだ。
<目に見えない針>を。
これだけでも彼の非凡さが分かる。<戦術師>の放つ魔術をことごとく消し去ってしまうのだから。
僅か七歳の子供が。
さらに、
「ファ! 僕に力を貸せ!!」
「分かった、お兄ちゃん」
ジョッシュが命じると、ファは心得た動きで兄の前に手を差し出し、まるで大きなボールを上下から手で挟んで支えるような姿勢をとった。
その彼女の手の間に、見えない力が集まるのが、見る者が見れば分かってしまうだろう。そこに魔力を凝縮しているのだ。これまた五歳の子供が。
かつて途方もない力で<魔王>を退け世界を救ったという英雄の血を受け継ぎ、その才能を発現させた、本物の<天賦の才>の持ち主がそこにいた。
この二人に比べれば、チート能力を持つとされる主人公すら、あくまで凡夫の範疇に収まるというものなのかもしれない。
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