村人、驕った貴族に死を望む
村人は、アリシアが寝付いたことを確認して応援を呼びに行ったが、当然、アリシアは寝てなどいなかった。
アトラクションのプレイヤーだからそもそも寝る必要がないというのもある上に、アリシア自身がロボットなので睡眠は本来必要ない。
とは言え、現在のアリシアには<スリープモードでの休息>が必要なのは周知の事実。
けれどそれも、ロボットならではの<対処法>もある。
実は、千堂アリシア自身である<アリシア2234-LMN-UNIQUE000>自体はほとんどの機能をサスペンドさせた上で、ごく一部の領域だけを残して<アリシア2234-HHC>を稼動させるということもできてしまうのだ。
何しろ、標準仕様とは言えどAIの性能自体は大きな差がないため、
<感情を伴わない部分の思考>
についてはアリシア2234-HHCの方でも賄えてしまうという。
ただしそれは、かつて
<千堂アリシアのデータをコピーしたアリシア2234-LMN>
と同等の状態ということではあるが。
千堂アリシアの記憶を持ちながらも、ほぼ変わらない思考をしながらも、
『決して千堂アリシア本人ではない』
というそれに近い状態だということだ。
ただし、ただのコピーと違い、千堂アリシアとのリンクはそのままなので、必要とあれば彼女自身が思考し制御することもできるゆえに、完全に別人というわけでもなかったりする。
まあそれは余談なので置くとして、この時のアリシアは寝る時間でもなかったので、完全に彼女自身であった。
となれば、ただの人間など何人集まろうと彼女の敵ではない。
村人達が踏み入った時、
「お待ちしておりました。お話し合いは無用とのことですので、私としても大変残念ではありますが、実力を持って対処に当らせていただきます」
ベッドの脇に立ち、しっかりと身支度を整えて、丁寧に頭を下げながらそう宣告した。
「な……! 話が違うぞ……!」
明らかに荒事に備えていたとはいえ、寝込みを襲う手筈だった男達は戸惑ったものの、いまさら後には引けず、鍬や<ピッチフォーク>と呼ばれる、食器のフォークに良く似た形の農具を手に、アリシアと対峙した。
が、いくら体力自慢であってもただの農民に過ぎない男達がアリシアに敵うはずもない。
「驕った貴族に死を!!」
そう叫びながら体ごと突っ込んできた男が構えていたピッチフォークの先を、指でただつまんだ。
すると、それだけでもう、男は前にも後ろにも動けなくなったのだった。
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