専門家、意見を述べる
「ロープやワイヤー等でプローブを固定し、それによって回収するという方法も失敗に終わっています」
ネルディの説明に、
「そりゃ、こんだけ潮の流れが複雑で速くて障害物が多けりゃ当然だな」
参加者の一人だったベテランダイバーがうんうんと頷きながら呟く。ロボットによる水中作業のオペレーター達も『さもありなん』という表情だった。
「ぱっと見るだけでも、小型ロボットを侵入させる場合、最低、アームを使った三点支持により機体を固定した上での作業が必要だ。しかも、この流れに逆らって確実に機体を固定できるほどの強度のアームを持った小型ロボットは、市場にはない。となると、当然、専用のロボットの開発が必要だな」
これもまた<専門家>としての意見だった。
それを受けて、ネルディは、
「はい。我々も同じ結論に達しました。しかしそれを行っているだけの時間的な余裕はないと判断します。現に、今の段階でも、一日平均、一メートルの速度で、<目標>は流されていってるのです。
この映像もリアルタイムのものではありません。なので、実際の現場では改めて<目標>を捜索、発見、その上で回収という手順になるでしょう」
と応える。
すると、
「普通のサルベージ業者はそこまでやろうとは思わないね。俺達の仕事はあくまで<回収>だ。捜索はそっちでやってくれ」
という声も上がる。これも<素直な意見>だっただろう。
もっとも、『捜索はそっちでやってくれ』というのは厳密には必ずしも適切じゃない。実際には捜索なども含めて行う業者はあるし、事実、それを業務内容に含めている業者も来ている。ここまでクグリの捜索には民間の業者も参加している。
ただ、危険を冒してまで好き好んでそれを引き受ける業者はないというだけだ。
実際に危険を冒すことになるのはロボットではあるものの、水中作業用のロボットは彼らにすれば<仲間>のようなものでもある。仲間とまでは言わなくても、彼らのようなプロフェッショナルが使うロボットは非常に高価だというのもある。心情的に納得できないリスクを積極的に負いたくはない。というのも分かる。
その上で、千堂は発言する。
「我々、
それに対して、
「あれが
「あいつの隣のメイトギア。あれが事件の時の奴だそうだ」
「ああ、道理で見たことあると思った」
ざわざわとブリーフィングルームが騒々しくなったのだった。
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