千堂とアリシア、ニューダカールへと飛ぶ

三日後、千堂京一せんどうけいいちと千堂アリシアは、GLAN-AFRICAグランアフリカへ向けて飛び立った。


なお、アリシアが<アリシア2234-LMN>から<千堂アリシア>となるきっかけとなったあの事件の際に撃墜された千堂のプライベートジェットは、保険金が下りたことで新たに購入したものの、今回は社用のジェットでの移動である。仕事の場合は基本的に社用のジェットを使うことになっているのだが、あの時は新良賀あらがが手を回したことで社用のジェットが調達できず、仕方なく千堂のプライベートジェットが使われただけだった。


そして今回は何事もなく、GLAN-AFRICAグランアフリカのニューダカールへと到着した。<クグリの遺体らしきもの>が発見された場所から最も近い、GLAN-AFRICAグランアフリカが擁する軍の拠点がある都市ということで、<海洋調査>の本部がそこに設置されているからである。


<クイーン・オブ・マーズ号事件>の現場からは千二百キロも離れているものの、海流を考慮に入れれば可能性は十分にあるということで、写真から判別された骨格の適合率からも、蓋然性は高いと見られている。


とは言え、最終的な確定にはやはり遺体そのものを回収しDNA検査に掛ける以外にはないという判断から、今回のミッションが提案された。


ニューダカールに降り立ち、千堂とアリシアは、社用ジェットの貨物室から魔鱗マリン2341-DSEの実験機が梱包されたコンテナが下ろされるのを見守る。


その表情は、バカンスで来たわけではないので当然だが、やや硬いものだった。そんな二人に近付き、


「この度はご協力感謝します」


と声を掛けた恰幅のいい軍服の男性は、警護の兵士二人と軍服に身を包んだ軍用メイトギア二体を従えた、ニューダカールに駐在するGLAN-AFRICAグランアフリカ統合軍の責任者、アルベルト=グスマン中将だった。


「お出迎えありがとうございます」


千堂が握手で応じる。すると中将は彼の隣に控えている千堂アリシアを見て、


「おお、こちらがあの一件でクグリを退けたというアリシア2234-LMNですな?」


感心したように声を上げた。


それに対してアリシアは敢えて何も言わず、ただ頭を下げる。それが基本的なロボットの<挨拶>だった。この時、中将はあくまで千堂と話しているだけで、アリシアに対しては話しかけていなかったからだ。


しかも中将は明らかにアリシアのことを、自分が従えている軍用メイトギアと完全に同列に見ているのが千堂にもアリシアにも分かったのだった。


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