千堂アリシア、楓舞1141-MPSを出し抜く
しかし、その切っ先がAIを収めている区画に届くより先に、彼の爪がナイフを持ったアリシアの腕を切り落とす。
と同時に、もう片方の前足が彼女の胸を貫く。
今回もまた、
結果としてはだが。
とは言え、紙一重の勝利であったことも事実。
「あ~、惜しかった~」
シミュレーションが終了し、アリシアは悔しそうに言った。
それを確認したエリナが、彼女に問い掛ける。
「どうやって
アリシアがいない位置に彼を誘い出したことについてだった。
するとアリシアは、
「音の反射を使ったんです。今回は市街戦で、ビルの壁に丁度いい感じの窪みがあったからそこに音を反射させたら位置を誤認させられるんじゃないかと思って。
そこまでは上手くいったみたいですけど、先手を取っても彼を倒し切るには至りませんでしたね」
頭を掻きながら応えた。
光学迷彩を使っている対象の位置を確認するためにそれを使ったことについてはデータにあったものの、まさか今度は逆に自分の位置を攪乱するために使うとか。むしろ、『対象の位置を確認するためにそれを使った』というデータがあったからこそ、
理屈そのものは説明されれば単純なものの、普通のロボットはそのような発想には至らない。
逆に人間であればそういう発想を持つ者も中にはいるだろうが、根本的なスペックの差があり、
普通のロボットにはできない発想をし、かつ人間にはできない動きができるアリシアならではの結果だったと言えるだろう。
しかしこれには、エリナ・バーンズも唸らされていた。
『まさかこれほどとは……まずいわね。千堂さんでこれだけのことができるのが分かってしまうと……』
千堂アリシアは、あくまで要人警護仕様のメイトギアであるため、単純な戦闘能力であれば純粋な戦闘用ロボットには到底及ばない。
ましてや
にも拘らず危ういところだったのだ。
それはつまり、それなりの能力さえあれば後は機転によって能力差を埋めることができてしまうことを示唆していたのだった。
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