千堂アリシア、思案する
一時間のメンテナンスを受け、アリシアと
今回の演習場は、市街戦を想定したものである。
そこに、アリシアはハンドカノンと超振動ナイフを装備した状態で配された。
『とは言え、先ほどの結果からすると私に勝ち目はなさそうだけど……』
などと考えつつも、可能な限り抵抗してみせないとテストにはならない。いや、千堂アリシアをここまで一方的に圧倒することができると確認できればそれはそれで上々の結果と言えるのかも知れないが。
『だけど、このままやられっぱなしというのも癪かな』
とも考えてしまう。
<心のようなもの>を持つが故に。
『さりとて、どうすればいいのか……』
しかしロボットでもあるが故に、できることとできないことも分かってしまう。アルゴリズムだけのシミュレーションの段階でも分かっていた通り、普通なら勝てる道理はまるでないのだ。
それでも、アリシアは考える。
『ロボットにも人間にもできない、私だからこそできること……』
彼女がそんなことを考えている間にも、
「では、スタート!」
エリナの合図と共にシミュレーションは開始された。
が、さすがに今回は市街戦だけあって双方共に障害物の陰に隠れ、すぐには動かない。お互いの位置も知らされていない。索敵も含めてのシミュレーションだった。
共にセンサーを最大限に活かして相手を探す。
人間であれば心音や呼吸音や体温などですぐに発見されてしまうところだが、さすがにロボットはその辺りも対処できる。
と、その時、
「あ、あ、あ!」
アリシアが、突然、声を上げた。
以前、千堂邸に、キングと呼ばれる<誘拐屋>の襲撃があった時に、光学迷彩を使っていたキングの位置を掴むために彼女が発した声と同じものだった。
音の反射で
いや、そうではなかった。
アリシアが声を発した瞬間、
「!?」
当然、そこにアリシアはいない。と同時に、彼の体が横っ飛びする。直後、彼のいた位置を何かが凄まじいスピードで奔り抜けた。ハンドカノンから放たれた弾丸だった。
しかも、彼が避けた先にも弾丸が迫る。
すると彼は、躱し切れないと判断して、僅かに体を捻っただけで、敢えて弾丸を受けてみせた。入射角を浅くして、装甲の表面で滑らせたのだ。
装甲の表面が少し抉れたものの致命傷にはならない。
するとその彼の目の前に、いつの間にかアリシアが迫っていたのだった。
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