獅子倉玄戒、UNIQUE000を窺う
『はあ~…失敗しちゃったな……』
アリシアはそう落ち込みながら自分の<部屋>に戻ったものの、彼女に掛かっているストレスそのものは許容値の範囲内に収まっていて、
『アリシアさん、頑張ってますね~』
彼女をモニターしていた
そこに、
「どうだ? <UNIQUE000>は?」
不意に声が掛けられる。しかし姫川はまるで動じることなく、
「順調ですよぉ~、順調すぎて面白みがないくらいですぅ~」
鼻に掛かった独特の話し方で、視線を向けることなく応えた。
慣れているからだろう。
そんな彼女に話しかけたのは、蓬髪で、白衣に身を包んだ、いかめしい顔つきの大柄な男だった。白衣よりも軍服でも身に付けている方が似合いそうな。
ロボティクス部門を統括する技術主任、
なお、彼が口にした<UNIQUE000>とは、現在の千堂アリシアの、メイトギアとしての正式名称、
<アリシア2234-LMN-UNIQUE000>
を指している。
これは、他に同様の事例が現時点では確認できないこと。再び同様の事例が発生する可能性が極めて低いことから、敢えて『000=存在しない機体』という意味合いで付けられたものだった。
そこには、彼女のことを、
『形式番号や製造番号で区別する単なるロボットと見做していない』
という
千堂はそう考えているものの、実際には彼女の体は今も<アリシア2234-LMN>のそれなので、
で、根っからの技術者である獅子倉としては千堂アリシアのことを、
『
としか思っていない(すくなくとも表面上は)ので、彼女のことをUNIQUE000と呼ぶのだった。
とは言え、彼にとっても非常に興味深い事例であり、純粋に技術者としての興味からも強い関心を示しているので、決して蔑ろにはしない。
彼は彼なりに千堂アリシアのことを大切にはしている。
その方向性が常人のそれとはややずれていて、分かり難いだけだ。
「ふん、こいつも随分と自分のことを制御できるようになってきたな。もっともそうでなきゃとっくにこの手でバラしてやってるとこだが」
……たぶん、分かり難いだけで彼女のことを大切には想ってくれている……
はずである。
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