2020年4月1日(水) 荷物が来た

 昨晩のビデオ会議は、全体的に弛緩したムードが漂っていた。


 そこそこの規模のコンシューマーゲーム案件である。歴史のあるシリーズ作品だが、据置型のプラットフォームでは久々の新作、という位置づけ。


 会議の参加人数は五人。

 キックオフしたばかりの案件なので、まずは複数のスタッフ(私のような外部のシナリオライターや、先方のプランナー)でメインシナリオの案を持ち寄り、それぞれの案を一個ずつ検討していく、という形式で会議は進行。


 世の中の先行きがどうなるか分からないので、シナリオの方向性をどう定めるべきか、みんなビジョンを持てていない空気を感じる。自分のアイデアを話すとき、みんな「これでいいのかな?」と言いたげな顔をしている。

 徹頭徹尾明るい、希望と勝利に満ちた話のほうがいいのか。それとも絶望からはい上がって勝利を収める話の方が良いのか。

 いろいろアイデアは出たが、どれも正直ぱっとしない。


 とりあえずコンセンサスが得られた部分は、「未知の病原菌や呪いをネタとして使うのはやめておこう」、「陰謀論めいたストーリーはよくない」、「物語の過程は暗くてもいいが、少なくとも結末は希望がもてる話にしよう」の三点だけ。


 マスクで顔を半分覆った、どう見ても悪党っぽい連中がオンラインで顔を突き合わせ、「やはり希望は大事ですよ!」と話し合う光景は、かなり異様だった。


▼午前八時 起床

 起きた。今日は猿の声が聞こえない。鳥の声も全然しない。

 不自然なくらい静かだ。不審に思って二階の窓から外を眺めていたが、家の周囲の状況は何も変わっていない。青々とした木々が風にそよいでいるのみ。

 日差しが強い。今日は暑そうだ。


 ツイッターを見ると、日本では全国的に雨らしい。低気圧で頭痛を訴える人がちらほら。新型コロナによる不安とストレスからか、タイムラインに刺々しい雰囲気が漂っている。


 朝食はラーメン。

 玄関でiPhoneをいじりながら仕事の連絡をしていると、十時ごろに宅配ボックスが「ガタン」と大きな音を立てた。

 すぐさま飛び出したが、地面に足跡なし。周囲に人の気配はなし。


 宅配ボックスを開けると、中には昨日注文した本が(やはり過剰包装気味の段ボールに梱包されて)入っていた。


 結論:どういう理屈か不明だが、うちにはAmazonで注文した荷物が届く。


 届くのは本だけなのか。Amazon以外の荷物も届くのか。

 あとでいろいろ試してみよう。


▼午後 十三時

 プロ野球解説者の梨田昌孝が新型コロナに感染したというニュースを見る。

 スポーツ紙の記事によれば、重度の肺炎だという。スポーツにはあまり興味がないので、この人のことはあまり知らないのだが、回復してほしいと思う。


 昼食は冷凍食品のチャーハンとインスタントラーメン。


 食後はAmazonに新しい注文。

 朝の疑問を解消するため、多様な品目を注文する。

 まずは消毒用のアルコール。懐中電灯。催涙スプレー。

 アウトドア用の防刃の軍手が欲しくて検索したら、関連商品として防刃素材のジャケットやバックパックが表示された。想像よりもだいぶ安い。それぞれ数千円だ。ついでにサバゲー用のヘルメットとマスクがあったので、まとめてカートにぶちこむ。


 草刈り用の鉈を注文しようと検索をかけたら、ハンドアックスがサジェストされた。かっこいいので買う。


 あとは食料品。

 調べたことなかったけど、Amazonって野菜も売ってるのか。日もちのするじゃがいもとタマネギを適当にカートへ。


 Amazon以外の通販が機能するかをチェックしなければならない。

 あと数日でタバコが切れそうなので、通販を試みる。タバコを通販で買うのは始めてだ。ショップのラインアップを見ると、紙巻きだけではなく、葉巻きや嗅ぎタバコ、パイプなども売っているらしい。

 興味は引かれるが、とりあえずいつも吸ってるアメスピのオレンジを一カートン。手巻きのシャグ(タバコの葉)を三袋注文した。シャグに種類は、真っ赤なパッケージが印象的なチェにした。

 テンション上げていこう。ウオオ、俺はゲバラだ。


▼午後三時ごろ

 昨日の会議で出したコンシューマーのプロットを軽く修正し、ほかの別案をいくつか考える。今週の金曜にまた会議があるので、それまでに二案は出せるようにしておきたい。


 夕方五時ごろ、チャットワークが反応しなくなって焦る。

 ネットワークの不調かと思って慌てたが、チャットワーク側で障害が起きていると知って安心した。

 だが困ったこともある。直近のToDoはチャットワークのマイチャットで管理しているのだ。やる気が一気に吹き飛んだ。


▼午後七時ごろ

 昨日書きかけていた原稿の続きをやろうとしたが、仕事の催促が入った。


 ソシャゲのキャラストで表示する一枚絵の指定書だ。イラストレーターに「こんな絵を描いてください」と発注するときの資料である。

 文字で絵の概要(どんなシチュエーションか、何を描かなければいけないか)をざっと書いて、似た構図の写真やイラスト、その他参考になりそうな画像を集めて、PDFにまとめる。

 これ、本来はプランナーが作るべきものだが、先方が余裕なさそうだったので引き受けてしまったのだ。ギャラはまったく出ない。完全なサービスである。

 ササッと作って送信。


 疲れたので、シャワーを浴びて寝ることにする。

 『虚構推理』の続きを見よう。

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