第7話

ミラの処女か。悪くない手だ。

さっき俺はレイアのキスだけで骨抜きにされた。

それ以上の快楽を与えられた場合、耐えられるかどうか自信がない。確かに俺を籠絡するには色仕掛けが一番だ。

下手な交渉が通じないのは今までのやり取りで理解しているだろうし、力ずくも恐らく無理だ。力ずくでどうにか出来るなら最初からしてる。で、そのまま俺の童貞を奪っている。


「しょ!? ちょ、ちょっと待ってよ、お姉ちゃん……。何で私がこんな変態に大切なしょ、処女をあげないといけないのよ……」


具体的な行為を想像してしまったのか顔を赤くして恥ずかしそうにしているミラ。

本当に姉と違って初心な反応をする。正直、からかいがいがあってレイアよりもタイプだ。


ていうか、よく考えたらレイアとミラって何歳なんだろう? ミラの外見年齢は中学生ぐらいだけど、異世界の住人だし見た目だけで判断していいのか分からない。

何より種族が違うんだ。人間と寿命が違ってもおかしくない。というより、そっちの方が自然だ。

つまりロリババァの可能性も。

処女のロリババァ……良いな。ちょっと興奮する。


「ごめんなさい、ちょっと欲情……じゃなくてテンションが上がって変な事を口走ってしまいました。いくら世界のためとはいえ私が可愛い妹を売ったりする訳ないじゃないですか。ミラちゃんの処女は世界なんかより重いんです!」


「いや、別に私の処女なんてそこまで大したものじゃないけど。本当に皆を助けられるなら処女なんていつでもあげるし……」


レイアのあまりに過剰な反応にミラが引いている。このまま上手く押せばミラの処女を貰えそうだ。

これはミラの性格を把握したレイアの駆け引きなのだろう。


「いえ、そんな事はありません! 私がミラちゃんに嘘を言ったことがありますか!? 本当にミラちゃんの処女にはそれだけの価値があるのです!」


あ、違う。これは心からの言葉だ。駆け引きとかではない。

可愛い連呼してたし怪しいとは思っていたけど、間違いなくレイアはシスコンだ。


「……嘘なんて数え切れないくらいつかれた覚えがあるけど。ていうか、よく考えたら何で私の処女とかそんな話が出てるの?」


ああ、そう言えば今更だけど全く説明してなかった。それでいきなり処女喪失のピンチなんだから焦るのも当然だ。俺もいきなり童貞卒業のチャンスが来たから分かる。

ただそんな事より俺としては良いところで邪魔されたせいで勃ちぱなっしな方が問題だ。落ち着けたいところだが、目の前で繰り広げられる会話に期待してしまって難しい。これでは生殺しだ。この場でヤるにしろヤラないにせよ早く結論を出してほしい。


「七瀬さん……ああ、こちらの私が連れて来た勇者の事なのですが、どうしても勇者をやりたくないと言いまして。頑張って説得したのですが上手くいかず、それで色仕掛けをしようとしていたところなのです」


レイアが簡単に説明する。

言っている事は何一つ間違っていないけど、何か納得出来ない。これではレイアが世界のために自己犠牲で体を捧げたように聞こえる。実際は趣味で襲おうとしてきただけなのに。


「なるほど、そういう事。確かにこれだけの力を持つ勇者候補を逃がす訳にはいかないものね」


状況を理解したミラが再度見通しの良くなった森の方を見る。そして手を口に当てて何か考え込んでいるようだ。 

これはもしかして俺の力を見てミラも色仕掛けを真剣に一考してくれているのだろうか?

そうだったら俺としてはこれ以上ないほどに喜ばしい。初体験が美人姉妹との3Pとか夢のようだ。


「この力が本物なら、ちゃんと魔法を学べば魔王に匹敵する力を――」


「ミラちゃん!? ストップ! それ以上は駄目です!」


「ん? 魔王に匹敵?」


あれ聞き間違いかな? 今変な言葉が聞こえたような気がするんだが。

いや、ミラは最後まで言ってないし俺の早とちりかもしれない。ちゃんと確認しないと。ここからどう続けば俺の早とちりになるのかは分からないけど。


「魔法一発だけでこの威力なんだが、これでも魔王の力を超えていないのか?」


「? そりゃ、そうでしょ? 相手は武力だけで世界を征服した化け物よ。森を消し飛ばす程度の力で勝てる訳ないじゃない」


何を当たり前の事を聞いてくるのか分からない、といった感じに首を傾げるミラ。

ふむ、なるほど。異世界の住人である俺にはよく分からないが、この世界の人からしたら当たり前のことらしい。つまりレイアもこの事を知っていた事になる。知っていた上で騙したのだ。

まぁ、別に俺も信じていた訳ではないが、ハッキリと騙されたと分かるとイラッとするものがある。


「なぁ、ちょっと聞きたい事があるんだが」


「な、なんでしょうか……。私のスリーサイズですか? それとも初体験のエピソードですか? 私に答えられる事なら何でも答えますよ」


俺が笑顔を向けるとレイアは明らかに誤魔化した。

それは嘘がバレて動揺しているから……ではない。その程度で動揺するほどレイアは分かりやすい性格をしていない。

では何故か? 単純な話である。

時間稼ぎだ。最初は完全に騙せなくても、この場させ誤魔化さればどうにでもなると思っていたのだろう。だがミラの発言で俺を言いくるめるのが難しくなった。だから次の案を今必死に考えているのだ。


「……?」


一人、事情が分かっていないミラは不思議そうにしている。

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