4月11日 我慢の朝
起きてリビングに行くとテレビが点いていた。パンを焼いて、バターを塗って食べながら和やかな番組を耳で聞く。
とんかつ、という言葉の由来の話を聞いて、とんかつが食べたくなった。
今日は父親が寿司を買ってきてくれるらしい。本当は回転寿司が食べに行きたい。回転しているのを、その場で取る、誰かがお茶入れて、というのを、入れて渡す。あの空間が好きだ。
時がゆっくりと流れていく。父親もリビングに来て、テレビを見ながらタブレットで何か動作をしている。そして、母も時間差でリビングのソファに座りに来る。
番組では東京の医療崩壊について特集がされていた。まだ感染者数は他国に比べればとても少ないと思っていたが、病床が足りなくなるほどには重症患者がいたらしい。
確かに毎日100~200人という数字にばかり注目して、東京の感染者数は3桁だとどこかで思い込んでしまっていたのだろうか。都内に2000人弱の感染者がいることを再度認識した。軽症ならきっと検査をしてもらえないだろうし、感染してもしばらくは検査してもらえない。それを考えるとおぞましい。
父親がまたどこかで見た情報と持論を混ぜて何かを語っていた。まるで知り尽くしているかのような口調に私たちはいつも通り反論する。
感染は飲み屋で起こっている、と断言する父に呆れる。
緊急事態宣言が出ているにもかかわらず高頻度で会社へ行く父親へ私たちは反論をした。
「その飲み屋に行って感染しているかもしれないサラリーマンと同じ電車に乗って移る可能性は十分にあるんだよ」
私たちは家にいるのに、それだとまるで意味がない。話を逸らそうとする父親を、私と母親は必死に説得した。会社に行かないとできないことがある、という父親になんとか週1回以下で済むように、と。
我慢しているのはあなただけではない、と。
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