4月7日 走る朝
「液体石鹸が切れてるから、買ってきて」
母が昨日私に言った。この三日間のうちに、と言われたもので、明日か、明後日か、また次の日か、いつか外に出る機会があれば買いに行けばいいものだと思っていた。
緊急事態宣言が出た昨日。概要を見てみれば外出自粛を要請だとか、必需品を売る店舗以外閉めるだとか、なんだか今までと変わらないじゃないかと思ってしまう。店なんてどこも世間体に合わせて早くに店仕舞いをしていたり、休日には休業しているところばかりだ。
しかしこの宣言を見てきっと焦る人も多いだろうから、売り切れる前に早く、と私は急かされた。
毎日12時に起きている私も今日は8時半に重い体を起こした。9時に開店する薬局へ向かうも、薬と切れたコンディショナーの替えしか買えず。
買い物リストにはトイレットペーパーと詰め替え用石鹸の文字が残る中、私は町の中心から離れた薬局へと自転車を走らせた。
幸いにも——いや、開店前に行けても開店後1時間経っていても店の在庫など変わりはしないだろうが——その店は10時開店だった。
開店前に並ぶ人。その中で店員さんに尋ねる人。
「アルコール消毒液はすみません在庫がないようです」
そんな声が聞こえた。
店内には石鹸がなかった。ボディソープなら売っているのにハンドソープの売り場が見事に空になっていた。
眠くなりながらレジに並び、トイレットペーパーだけを自転車のかごに贅沢に乗せた。四人家族が家で過ごすとなると、何もかもの減りが早かった。
家に着くと、母とレシートと紙幣を交換した。さてこれから寝るとしようか。
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