アフターストーリー

第1話 プロローグとリブロース

【まえがき】

 ここから先のお話は、2人の文化祭後の物語になります。今後は続編で出していた物語を、本編の番外編として少しずつ公開していこうと思いますので、お時間がある時に読んで頂ければ幸いです。



 それでは本編をお楽しみ下さい。




 ………………

 ………………





「なぁなぎさ……」

「ん、どうしたの折羽おりは?」


 僕は自宅のキッチンで料理を作っている。文化祭が終わってそのまま僕の家に2人で帰ってきた。もちろん手を繋いで。


「ステーキならもうちょっと待ってね、余熱で温めてるから」


 お腹が空いたのかなと僕は彼女を気遣う。しかし、彼女はそれには反応せず一点を見つめて詩人のように呟く。


「付き合うって、どうすりゃいいんだ?」

「…………」


 彼女の言ってる事はごもっとも。


 確かに……付き合うってどうすればいいんだろう?


 僕はステーキの様子を見つつ、テンプレートな返しをする。



「えーっと。一緒にご飯食べたり、海に行ったり、花火を見たり、デートしたり……それに、キ……キスしたり」


 最後の方は文化祭直後という事もありイメージが鮮明過ぎて自分で照れてしまった。これでは突撃のクロエの名が廃れてしまう。


「なぁ、それって……」

「うん」


 彼女は僕の言葉をゆっくりと噛み締めてから言葉を探しているようだ。


「いつもと、変わんなくね?」

「!!」


 アレ? おかしいな……言われてみればその通りな気がする。


「……変わらないね」

「だろ?」


 長い沈黙がその場を支配する。だが、肉の香ばしい匂いに疲れている体が反応してしまう。


 ぐぅぅぅ

 ぐぅぅぅ


「「……」」


 お互いに顔を赤くして俯く。しかしここは僕の十八番おはこの見せ所。


「んもぅ! 折羽のお腹は可愛いね」

「ぶっ飛ばす」


 腹ぺこ折羽ちゃんは、僕の両頬をバシンと手で挟むと、顔を近づけてきた。


「へ、ヘッドバットはお手柔らかに〜」


 頭突きをされると思い目を固く瞑る。しかし、いつまで経ってもこない衝撃に薄目を開くと……


 チュッ


 唇に柔らかな感触。


「お、折羽……」


「食べる前に確かめたくてな」

「確かめる?」

「渚が私の恋人だって事を……」


 恥じらう彼女の頬はサクラ色。ステーキの中もサクラ色。積極的なのか大胆なのか……僕の彼女は最高だ。


「うん、僕も確かめたい……」

「いいぜ……」




 その後2人で食べたリブロースは、甘くて、胡椒がほどよく効いて……そしてとっても優しい味がした。


 今日、僕の彼女は『キス魔の折羽』になりました。



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