第26話 彼女と勉強
「藤宮さん、その人は誰?」
「いや誰ってクラスメイトだろう」
(さっきあなたもわからなかったじゃない……)
「あはは!藤宮さん以外に興味が無いからね」
「ひどいッ!初めの頃は名前呼んでくれたじゃん!」
「いやぁだってこの前のテスト後の事で君は何もしなかったよね?そんなの僕からしたら敵じゃん?」
「それは……その……」
やっぱり僕はまだ怒っていたんだな……
「クロエ……その辺にしとけ。私は大丈夫だから」
藤宮さんは優しく僕に諭してくれる。こんな表情の藤宮さんは初めて見る。
「わかった!藤宮さんがそう言うなら!で?何しに来たの?てか誰だっけ?」
「ほ、星宮です」
「ふーん、それで?」
僕はあまり興味が無く話を切り上げたかったが、藤宮さんがそうさせてくれない。
「ここからは私が話すよ」
「……うん」
僕は藤宮さんと向かい合わせに座る。正面に座った藤宮さんはほんとに美しいと思う。思わず見蕩れていると。
「クロエ……さっきの話の続きなんだが」
「うん?」
「私達は……まぁ、その……テストで点がとれないだろう?」
「そんな事気にしないよ?点がとれなくても藤宮さんは立派だよ?」
「……ッ!」
僕の言葉に藤宮さんは顔を赤くしている。
「いやまぁそうじゃなくて、そんなに真っ直ぐ言わなくても……」
「藤宮さん?熱でもあるの?」
最近の藤宮さんは僕からの返しに、たまにこういう反応をする。照れているんだろうけど、正直どこが照れポイントなのかわならない。
「ふぅ……とりあえず。テストで点をとるための勉強をしようと思う」
「……うん」
「それで星宮に手伝ってもらおうって訳だ!」
「必要ないよ?」
その言葉に星宮さんはガクッと膝をついている。
「お前……ほんとに容赦ないな……」
「わ、私は女の子なのに……こんな扱い受けたのは初めてだよ……」
そこでその状況を見ていたクラスの数人が星宮さんの援護を始める。
「そうだそクロエ!こんなに可愛い星宮を泣かせるなんて!」
「そうよクロエくん!女の子にはもうちょっと優しくしないと、モテないよ?」
「「そうだ!そうだ!」」
クラスの連中はその言葉に賛同するように声を大にしている。そこで僕はまた余計なことを言ってしまった。
「えっ?女の子だから何をしてもいいの?何それ?」
「……」
「ねぇ、何それ?君たちはその女の子の藤宮さんを泣かせようよしたよね?今みたいな状況でも誰も味方をしようとしなかったよね?」
静かになるクラスメイト
「それにさ、女の子だからとか男の子だからとか正直どうでもいいんだよね」
「……」
「女とか男である前に1人の人間なんだよね。そんな1人の人間を容姿とか立場で勝手に自分の理想像にしてるのは君たちだよ?」
「クロエ……もう」
「藤宮さんは黙っててッ!」
「ッ!!」
初めて藤宮さんに強い口調で言ってしまった。いや……これはただの八つ当たりだ。
「ねぇ、僕はさ君たちと話したくないんだよね。集団でしか物事を言えない君たちに関わってる暇なんてないんだよね。どっか行ってくれないかな?藤宮さんとお喋りできないじゃん」
その言葉に目を潤ませる女子生徒、そして後ずさる男子達。
「それよりさぁ?この前の事忘れてないからね?」
「「ご、ごめんなさい!」」
いきなりその場にいた女子生徒が謝ってきた。
「いや僕に謝ってもらっても……相手が違う」
「ふ、藤宮さん……ごめんなさい」
「あ、いや……私は別に」
「「俺達もごめん!」」
「勝手に決めつけたり、嫉妬したりしてた」
「いや、だから私は気にしてないから」
いきなりの謝罪に藤宮さんは困惑している。そしてクラスメイトは僕の方にも謝って来て足早にその場を去っていった。
「で、なんの話だっけ?」
僕は何事も無かったように藤宮さんに話しかける。
「……まぁ色々あったが、テスト勉強をしようってこった」
「えぇ……終わったばっかじゃん」
「このままだと私ら夏休みは補習だぞ?」
「藤宮さんと一緒ならそれでもいい」
はぁ……とため息を吐く藤宮さん。そして……
「私は夏休みを……まぁ……あれだ!」
「ん?」
その後の言葉は今までになく恥ずかしそうにつぶやいた
「お前と……一緒に……遊びたい」
「んもぅ!藤宮さんってば大胆ッ!!」
そこに空気になっている人が1人……
「わたし……いる意味あるのかな……」
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