第24話 彼の日課②
「さな〜ただいま〜!」
僕は鼻歌混じりのテンションで玄関をくぐる。すると中から元気のいい声が聞こえてきた。
「お兄ちゃんおかえり〜」
「えへへ〜ありがとう、そえいえば昨日のお土産食べた?」
僕は昨日、藤宮さん家でご馳走になって、帰り際に卵焼きのお土産をもらった。そして夜も遅かったので妹には今日食べるように伝えておいた。
「さいっこ〜〜だったよ!お兄ちゃんッ」
さなは凄く興奮した様子。良かった良かった!そんな妹に僕はさらなるサプライズを用意している。
「今日の晩ご飯はなんと……」
ジャカジャカジャカジャカッ
「ばん!パエリアでーす!」
僕の一言を聞いてさなの顔は益々明るくなる。
「パ、パエリアッ!」
「うん!今日店長に教えてもらったんだ!それに材料もわけてくれてバイト先で下処理も済ませてある」
わーい!とはしゃぐさなを見つめて僕はドヤ顔をしている。
「ふっふーん!どうだいさな!お兄ちゃんは凄いだろう?」
「はい!お兄ちゃんはさなの理想です」
「ハッハッハ!その言葉聞き届けたり〜」
僕はさなの言葉に有頂天になりルンルン気分で料理を開始する。バイト先でご飯を炊いて来たので中身を見てみる。すると目にしたのは鮮やかな黄色。
(これがターメリックライスかぁ……)
そして海鮮の数々はどれも色とりどり。他にはバイト先で作っておいた唐揚げと、藤宮さんに貰った卵焼きをおかずにして、さなと一緒に食べ進める。
「さな……どう?」
「…………」
ゴクリッ
「蕩けそうなほど美味しい〜」
「キャッホーイ!美味しい、いただきました!!」
僕はその場で小躍りをはじめてしまった。普通なら近所迷惑になるだろうが……安心してほしい。
僕達の家の周りには誰も住んでいない
正確には周りには家がない。あるのは木々に囲まれた森……その森の奥にある一軒家が僕達の家だ。普通なら誰も立ち入らないような不気味な森だから騒いでも問題ないのだ!
「お兄ちゃん、そういえば黄金のお姫様とはどうなったの?」
「んぐ?ふひひあはん?」
「飲み込んで喋って……」
「ごくッ。ごめん、藤宮さんの事?」
「うん」
「僕の事が好きみたい(大嘘)」
「嘘だね」
妹は恋愛に関しては手厳しいようだ。
「まぁ時間の問題かな!最近では一緒にご飯を食べて、一緒にご飯を食べて……一緒に……ご飯を……」
アレ?藤宮さんと一緒にご飯しか食べてないぞ?
「お兄ちゃん……」
冷たいさなの視線。
「んもぅ!さなの視線は武器だぞッ」
「……」
「ごめんなさい。ちゃんとします、はい。今度デートに誘ってみます」
「よろしい」
さなの許しも得たことで食事を再開した。
(そういえば……藤宮さんからの交換日記まだ見てないや。まっ後からでいっか!)
僕は妹と楽しく話しながら今日の日課を終わらせるのであった。
外にいる人影にも気づかずに……
◆◆◆◆◆
私は彼に気づかれないように明かりが付いている部屋に張り付く。
「……よく聞こえねぇ」
「ーーーーはは」
「さーーーパ」
「ーーーーごめ」
何かを話しているようだ……しかし聞こえてくるのは……
「……アイツは……誰と話してるんだ?」
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