第23話 彼と非日常
「ふっじみやさ〜ん!おはよ〜」
僕はクルクル回りながら藤宮さんに挨拶する。だって昨日があんなに楽しかったから!
そんな藤宮さんの返しは……
「お、おう。……おはようさん」
なんということでしょう!あの藤宮さんが素直に挨拶を返してくれるなんて!
「なぎさ感激ッ!」
「それはキモいッ」
激落ち……
「あのよ……それで、その……」
今日はどうしたんだろう?藤宮さんがいつもよりよそよそしいぞ?でも避けられてるというより、何かを隠しているような……
「どうしたの藤宮さん!あっ!そういえば昨日の卵焼き美味しかったよ」
「え、あ、あぁ……そっか」
「さなも美味しいって言って喜んでたよ!ありがとうね藤宮さん」
僕の感謝の言葉に藤宮さんは少し顔を下にして何か考えている。
「どうしたの?藤宮さん」
そして彼女は衝撃的な発言をする。
「なぁ……お前の家……行っていいか」
「へ?家?」
僕の中では……彼氏の家=そういう事OK
という構図が出来上がっていた。震え出す僕……不安に見つめる彼女。両者の目論見はバラバラだが、僕は意を決して彼女に告げる。
「藤宮さん……」
「な、なんだ?」
「初めては優しくして下さい」
「はぁ?お前ッ何言ってやがる?」
ほんとに何を言っているのかわからない様子の藤宮さんに僕は堂々と、クラスメイトがいるのも構わずに叫んだ。
「初めてのエッチは優しくしてねって事だよ!」
「ッ!!そうじゃねぇよ!バカヤロー」
ドゴンッ
藤宮さんのドロップキックが炸裂した。その瞬間に見えた今日の下着……幸いこの位置からは僕だけが拝むことができたエデン。
「……薄ピンクの花柄……似合ってる」
今際の際にそれだけを藤宮さんに告げ、僕の意識は刈り取られた。
◆◆◆◆◆
目が覚めると知らない天井
いや何度も見た天井だ。そしてとなりには……誰もいない。
「今、何時だ?」
僕は起き上がり時計を見る。
16時43分
「やばい……バイトに行かなくちゃ」
その足でベッドを抜け出し、近くにあった僕の鞄を持つ。するの1枚の紙がヒラリと宙を巻い床に落ちる。
「なんだこれ?」
拾い上げて折りたたまれた紙を開く
『今世紀最大のドロップキックどうだった?それと……悪かったな。カバンの中に日記を入れておいたから、帰って見てくれ』
藤宮さんからの手紙だった。
「んもぅ!藤宮さんてばユーモラス」
僕はクネクネしながら保健室を後にする。実際はホームルームから今まで寝てただけ。学校に寝に来たと言ってもいいくらいだ。
そして、職員室に行き園田先生に挨拶をする。
「やっと起きたか黒江!心配したぞ、大丈夫か?」
「はい!ぐっすりと寝ましたから」
「藤宮の奴があんなに慌てたのは初めて見たぞ」
「先生、動画残ってません?」
「そもそも録画してねぇよ!」
僕はしょんぼりしてその場を去ろうとしたが、園田先生に止められた
「黒江……」
「はい?」
「大丈夫か?」
「え?怪我はありませんよ?ああ見えて藤宮さんいっつも手加減してくれますし」
「いや……そうじゃなくて……その」
僕は先生を見つめる。
先生が何を言いたいのか実際はわかっている。僕の身に起きた事を知る数少ない理解者だ。先生達がいたからこそ僕は今こうしているのだ。
「先生……ありがとうございます。僕は大丈夫です」
「……そうか」
そう告げて先生は僕に行ってよしと背中を押してくれた。
その顔はどこか暗く、それでも懸命に明るく振舞おうとしているようだった。
「じゃあバイトに行ってきます」
そして僕はバイト先の定食屋に行く。そしていつものように働き、いつものようにバイトを終え帰路につく。
(今日は藤宮さん居なかったなぁ……)
寂しく思いながらも、妹の待つマイホームへと思いを馳せると自然と足が軽くなる。
「ふんふふ〜ん!昨日はたのしかったなぁ」
スタスタスタ……
その足音は自分のものでは無い……尾行されているとは知らずに彼はそのまま家に向かう
「……」
「ここが……アイツの家……」
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