第14話 彼女の思い
藤宮さんと交換日記をする事になった。
とても嬉しい、凄く嬉しい!
「なにを書こうかな……」
「お兄ちゃんどうしたの?」
「さな〜、実はね黄金のお姫様と交換日記をする事になったんだよ〜」
「この前話してくれた人?」
「そうそう!何書こうかなぁ。さなは何がいいと思う?」
「う〜ん……お兄ちゃんの気持ち……かな?」
さなはうぅぅと唸りながら考えを口にした。
「そっか気持ちかぁ。うん、まずは僕の気持ちを書いてみよう!初めが肝心だよね。ありがとうさな〜」
彼女の頭を軽く撫でてあげると、えへへっとコロコロ笑っている。
その後さなは眠りについて、僕はそのままペンを走らせる。
翌日
「おはよう藤宮さん!交換日記持ってきた!」
「お、おう……日記か、まぁそっちの方がやりやすいか」
「初めは何書けばいいかわからなかったけど……僕の思いを書いてみたよ」
「……そっか、なんか怖いんだが」
「後で読んでね!」
予鈴が鳴ったので僕は日記帳を藤宮さんに渡して席についた。
その後授業が進みお昼休み、最近恒例の一緒に昼食(藤宮さんから一品おかずをもらう)を終えて放課後。
ちなみに今日の藤宮さんのメニューは
『ロースカツ定食ご飯大盛り・マカロニサラダ・納豆・高野豆腐の煮物・ほうれん草のごま和え・プリン・チョコチップスコーン』
(僕はロースカツをもらった)
バンッ
「おい……これはどういう事だ?」
「えっと……どうと言われましても」
授業終了と同時に僕の机に突撃してきた藤宮さん。そして机には朝渡した日記帳が広げられている。それをバシバシ叩きながら僕に詰め寄る。
「これはアレか?喧嘩売ってんのか?」
「そんな、喧嘩なんて!僕の正直な気持ちを書いただけだよ」
「正直な気持ち……これが」
藤宮さんは日記帳に視線を落とし、その声も自然とどんよりしている。
『拝啓、藤宮折羽様……』
そこから続くのは僕がどれだけ藤宮さんを好きかという内容の文字、文字!文字!!!
それが丸々一ページ。
そしてその次のページには藤宮さんを想って書いたポエムが丸々一ページに渡り埋め尽くされていた。
「これが喧嘩を売ってるんじゃないって?」
「ダメだったかな……何書けばいいかわかんなかったし。それに……友達に手紙を書くのが初めてだったから……」
僕は少し残念な気持ちで日記帳を見つめる。その感情が声にも出ていたのだろう。
「……いや、ダメって訳じゃ……」
「ごめんね藤宮さん、そんなつもりじゃなかったんだけど……」
僕の様子を見て藤宮さんも申し訳なさそうにしている。
「あ、いや……わりぃ、私もちょっとビックリしただけだ……」
二人して互いに何を話せばいいかわからず悶々とした時間が過ぎる。
その均衡を破ったのは藤宮さんだ。
「……なんだその、家に帰ってゆっくり見て……いいか?」
藤宮さんからの言葉に僕はキョトンとしてしまった。
「……えっ?」
藤宮さんは少しモジモジしながら俯いて続ける。
「今まで私に告白してきた連中はさ、遠回りなヤツらばかりだったんだよ」
藤宮さんが自分の話をするなんて珍しい。
「知り合いの女子伝手で告白したり、スマホで告白してきたり、直接言ってくるヤツは数える程だった」
それに……
「私が振ると、その後再度告白してくるヤツなんて皆無だった……所詮その程度の覚悟しかなかったって思ったよ。あと告白の目的が見え見えだったから、振る時はこっぴどく振ったけどな」
彼女は少し寂しそうに顔をあげ遠くを見ていたが、後半は冗談半分に微笑んでいた。
「……藤宮さん」
僕は名前を呼ぶだけで精一杯だった。
「だからよ……その、お前みたいに何度も何度も、いや毎日毎日飽きもせず告白してくる奴は初めてだ!」
だから……
「ちょっとくらい興味が湧いちまったのさ」
「うん……」
「その……お前の想いをゆっくり読ませてくれるか?」
「うん!!」
僕の返事に藤宮さんはどこか安心したような顔になった。そして、その時初めて見た。いや……あの時以来かな……
穏やかで優しい天使のような笑顔を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます