第11話 彼女の変化

 僕は昼休みに学食で藤宮さんの前に座っている。

 今日の藤宮さんのメニューは

『カレーうどん・とり天・野菜かき揚げ・いなり寿司(五個)・杏仁豆腐・きな粉餅』

 やや和食より?のメニューだ。


 そして周りはもう驚く事もなくなっている。

 学食の日常の一コマとして受け入れつつある。


「ねぇねぇ藤宮さん!聞いて聞いて!」

「……なんだよ」

「この前、藤宮さん定食屋でフードファイトしてたでしょ?」

「あん?あぁ確かに変な奴に絡まれたな」


 藤宮さんは僕が知っている事を不快に思うことはなかった。そのまま話を続ける。


「実はね!あの店は僕のバイト先なんだよね!」

「へぇそうなのか……飯はすげぇ美味かったぞ!」

「うんうん!僕が真心込めて作ったからね!」

「あっそ……」


 あれ?心なしか会話が成立している。

 すっごい嬉しい!


「それでね店長がまた来て欲しいって!あの時藤宮さん達のお陰ですごい売り上げだったんだって!」

「ふーんそっか」

「サービスするって!」

「いつ行けばいい?」


 もぅ藤宮さんてば現金な子!でもそこも可愛い!


「いつでもいいと思うよ?あっでも確か毎週土曜日は良い鶏肉が入るって言ってたから唐揚げとか油淋鶏とかの鳥料理がオススメなんだ」

「よし土曜日に行く!」


 僕は藤宮さんと楽しく話している。すると思いがけない事に藤宮さんから話を振られた。


「お前土曜日もバイトしてんのか?」

「うん!バイト楽しいよね〜」

「いや、まぁそうじゃないんだが……」

「藤宮さんは?休日何してるの?」

「……食べ歩き」

「藤宮さんらしいね」


 バキッ

 割り箸がブリッジしている。


「悪かったな……食い意地はってて」

「なんで謝るの?当たり前の事じゃん?食べなきゃ死んじゃうよ?僕はお腹が空いたまま死にたくないよ?」


 僕の一言を聞いた藤宮さんは少し驚いた様子で僕を見る。

 そしてカレーうどんを啜りながら


「変わってんな……」


 そのまま藤宮さんは黙ってしまった。

 それから藤宮さんは僕のお弁当を見て一言


「お前いつもそれだけなのか?」

「ん?お弁当の事?」

「あぁ」


 僕のお弁当はタッパーに入れられたご飯と卵焼き。それだけだ。


「いつもその組み合わせだよな?腹減らねぇか」

「う〜ん……慣れたかな?卵焼きいる?」

「いや、いらねぇ……」


 そう言った彼女は何を思ったのかあろう事か自分の分のとり天を僕のご飯の上に乗せてきた。


「!!」

 急転直下、これは明日嵐になるだろう。


「藤宮さんどうしたの?具合悪いの?救急車呼ぶ?」

「ぶっ飛ばすぞ?さっさと食え」


 僕は困惑して藤宮さんを見た。藤宮さんはそっぽを向きつつ、なぜだか少し頬が紅に染まっている。

 カレーが辛かったのかな?


 藤宮さんからの好意をありがたく受け取る事にしてとり天を一口食べる。


 その味は、ほんのり甘いカレーの味がした。

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