粗末な性と死

『僕が居なくなったら』

僕が居なくなったら その年の町は一年中サンバに狂ってる

僕が居なくなったら その日は祝日になって家中で豪華なご飯が用意される

僕が居なくなったら 報道される少年Aは全て僕の名前に差し替えられる

僕が居なくなったら 「迷惑かけられた」って会った事ない人が家族や友人を責めに来る

僕が居なくなったら 地面は全て僕の踏絵で人々がペンギンみたいに踏み歩く

僕が居なくなったら 患者さんにとって一番良い治療になるし商売繁盛

僕が居なくなったら 大切な時間を消費しなくて済んだ人々が有意義に時間を使える

僕が居なくなったら もっと上手く物事は進んでると思うんだ


心残りはあるかと言われたら

そりゃ多少はあるけれどこれが僕の時間だったんだからと

どれも割り切れるものばかりしかないんだ

睡眠薬を水代わりにお酒で押し流して

誰も来ない場所で寒い日に外で僕は寝るんだ

どうして君は涙する

嬉し泣きじゃないその涙は何?




『ユワリ』

羽がないから浮いてみた 目を閉じてゆっくりと

やがて君の小宇宙は海に満たされて

揺り籠で眠る生き物が居座る

それは日差しが射すまで夢物語に夢中


温かさで薄めた

億万の子供達をあなたは飲み干す

喉の崖に手を掛けるから

あなたは少しばかり苦しそうに笑った


砕いた光を撒いた午後 ゴミで出来た島の天使たちを犯しに

割れた鏡に写る俺の表情は俺も知らなかった表情で

水溜りの太陽は光線を泳がせていた

またどこかで鍵盤が押されるから

踊る国の生まれの人々はユワリと舞う





『ザルメシアン#292』

繰り返す展示館の環を廻っているのにもう疲れたから

魚になって外に飛び出した

墜ちる墜ちる潜る様にゆっくりと

気になっていた輝きだけのお日様捕まえに


ほら 聞こえてくるよ交響曲が


待ち構えられた両手に掬われ

呼吸を忘れていたので慌てて整えた

あなたは割れた硝子の様な声で

僕を硬い床へと手を滑らせた

ちゃんと展示物を見てなかったから

上手く身体を描けなかったみたい

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