エルニカって響きから

『村の頂上で春の樹は咲かず。』

水道の蛇口が開かれて、水の塔が勢い良く建設されてく

コップに溜めて飲み干してまた閉めるまでの間に

美しい時代がありました

………

それは良く晴れた、人の居ない11時の町で

声だけ生き物を追いかけていました

化粧の海で遠くが揺れていて

水着姿で歩いていましたが辿り着けず

呼んでも出てこない駄菓子屋で

そっとお釣りを置いてアイスを食べていたのです

お日様を眺めていると瞳に何かが蛍光で描かれて

目を閉じると黄色と緑の波紋と星が広がりました

………

犬だけの町へ御遣いに行って迷ってしまった少女は

骨の詰まった袋を渡されてはいなかったのです

虚ろな目で吠える犬達に少女が約束を守れないから要らないと

平たい石で小指を差し出すまでの間に

美しい時代がありました

………

家に帰る途中で蛹が降り注ぎ

車がパリっと音を経てて進むのが聴いてられなくて

心療内科に逃げ込んだのです

そこに居た彼等は蛹のまま院内を徘徊し

先生達は早く孵化しなさいと薬を渡してました

二階の白いベッドの並ぶ病室から見下ろすと

足の不自由な名の知らぬ蝶達が

羽を削りながら体を起こそうとしてました

山の方から黒い川がやって来て

多くの蝶達を運んで行きました

………

泳いだ気分で居たくてゴーグルに水を入れた

液体モザイク、視界だけの水中に

あなたが呼吸を出来ずに溺れ出すまでの間に

美しい時代がありました

………

黄金の臓器を覗かせる天使が売られているスーパーで

テルテル坊主の影を見ました

その影はまるで人の様な形をしていて

店員さんが新しく吊るした時にはジタバタと動いてました

店内の畑から引っこ抜いたじゃが芋

店内の海で釣った鰹は都会使用なので切り身だけで泳いでます

でっかいカプセルに女性が一人、ゲルに包まれて入ってたのです

産道に機械を装着していて

お金を入れて欲しい卵の数分、顔を苦めながら産んでくれたのです

………

こんなのでも美しい時代でした



『曖昧memind』

#1

煙草を止めたってのに

貴女の言葉は褪せず

におわず、香る

僕は小難しい話を貴女にしたがる

タールも強く、ニコチンも多く含んでるから

僕の肺は言葉の蓄積で真っ黒


#2

インディゴブルーと白で織られた

外れた日常に私を住ませて

私の持ってる瓶は皹が入っているの

6畳、明かり、下からの賑やかな声を音楽に

私をこの世界に閉じ込めて


#3

草原の鉄屑を感傷的なバスに揺られながら見てた

手の鳴る方へ 花言葉で書かれた地図も頼りに

もう絵画教室でシロップで線を滲ませないから

不健康な赤い羊の声を聴きたくて暗んでしまった

あなたよどうか 僕の前に出て来てくれないでしょうか?


#4

虹の橋は両端から消えるのってあれだけ言ったのに

真ん中で泣いてるあの子達を今更どうする事なんて出来ないわ

フラスコの都市からロケットで逃げ出したあなたへ

面長に伸ばされた世界を端から見てるけど

抜け出したあなたにはどの様に見えますか?

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