冬月時 1212

『冬』

草花も化粧を落とされて

暫くは恥ずかしくて顔を出せないわと

私にそう言って土に潜ってしまいました


この時期は食料が無いから

穴に篭って寝てることにするよと

熊はそう私に言って山へ帰りました


私はあなた達が潜めた

この季節をしっかりと見ています

乾いた空に冷たい風は刺します

篭りがちですがしっかり起きています




『雪』

あんまりにも冷え過ぎたから

雲の鱗が細かく降ってきます

地上に落ちては溶けて水になり帰って行く

だけど今夜は冷えるから

明日の外は一面真っ白にされていそうです

私の胸の真ん中はこれに似ている

今も積もっているコレは

何時になれば溶けるだろうか




『クリスマス』

今日は特別だから

前もって用意していた秘密

箱にしまって靴下に入れる

外は恋人達が寄り添い

明るく点灯する町並み


私は暖房の無い住まいで

息を白くしている

私の箱には今

棒が入っている

ケーキを食べて

プレゼントを互いに渡して

いい思い出作ろうでしたが

私の買ったお揃いのピアスなんて

どうでも良いようです

あなたが興味を示してるのは

私の身体でした




『お正月』

明けましたが愛でたくなくて

私は何処に明るさがあるか

究明している最中でした

蕎麦を食べながら考えていた


年明けの空を私は覚えていなかった

私はそれを空に尋ねると空は答えた

正月で実家に帰ってたからだってさ

成る程と私は頷いて

ライターに明るさを感じた




『お餅』

金網に餅を焼いていたけど

熱いと喚いていた


表面が膨れて来て破けた

殺してくれと叫んでた


ひっくり返すと焼け跡が付いていて

酷く焦げていて爛れていた


甘い醤油を掛けると

ギャアと泣きわめいていた


私は餅の死骸に海苔を巻き

一口で食べてしまった




『なまはげ』

なまはげに私は殺されなかった

近所の子供は悪い子で

両親が泣いていた

更正させますからとせがんでいたけど

お前達には資格がないと

なまはげは目の前で殺してみせた

私は暗くて世の中に適応出来ないと

なまはげに殺してくれとせがんだら

お前は悪くない駄目人間だと言われた

私はどうしようもないらしい

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