短編詩#31

『子供の部屋』

閉じっきりだった子供の部屋

行き帰りの二人は小さくなって入ってく

湿ったピンク色の壁の中で

やがて子供になっていく


膨れた部屋で大きくなってくけど

自分達も大きくなって狭いままだ

遊ぶものが無くて泣いたら

部屋は涙で満たされてった


柔らかい壁を蹴るのにも飽きて

暗闇の尻尾を切りたくなる月

さらに小さくなったドアを

頭でこじ開けるときに

夢で天使と約束をした

これから会う人に知らない昔を話してはいけないよと

上唇の真ん中をツンと押された


子供の二人は行く

涙で満たした子供の部屋を

子供の二人は行く

一つになって声を出しに




『ラジコン』

無線のアンテナが伸びて

回りながら花は空を舞う

君は積木が嫌いだった

枕を操作して世界を呼び込め


受け皿のクリームは

空気に触れて駄目になった

それで良いんだよ

コーラなんて効かないんだから


パントマイムが上手くなった

揺れた風船結び目は硬くって

噴水でびしょ濡れのベッドの上

声は円形に響いていくんだ


戦車でガラクタを行く様な

振動に液化していく固体

隔たりでまた遠くなって

また温度を浴びていくんだ


既に広がる暗闇の中に

真っ白な心で染まりたい

でも隔たりばかりで

君は居なくなって行った

電池も無いから連れ戻せない




『アサハナ』

今朝目覚めると私の花は萎れていた

昨日の夜まではあれ程元気だったのに

蕾まで伏せて横になっていた

内側の水分が走ってないんだ

刺激を与える 刺激を与える


卵を焼くフライパンは

持つところを尻尾にして逃げてった

硝子のコップが太陽を反射しながらテーブルで溶けた

約束のリボンは解けていた

中の行方を僕の靴が追いかけた

今日の休日は家で過ごす事にした


テレビ番組のスポンサーは前衛ジャックされていた

ラジオ頭の子供はノイズ混じりに他人の声で話すから

虐められて壊れかけになっている

バイオリニストは自分の腕を綺麗に鋸で鳴らしている

宇宙を包む世界があって

それを更に包む世界 包む世界が延々と

放送休止で映されていた


泡の細胞分裂が始まる

私は子供が欲しいとせがむ

明るい午後にカーテンを閉めて

丸いところ拭き取る仕草で知るのも良いんじゃない

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