愛誦メルトダウングラデーション

#1

開かずの踏切の様な恋をしているの

拍動はカンカンカンと鳴りっぱなし

向こう側に行きたいけど電車に轢かれるのが怖くて

私は今だに立ち止まってる

雲は向かいたい先へと流れていたわ

この歯痒さがあの様に疎遠だったらと思うの


#2

君は文学を抱いて崖から飛び降りた午後は

黄色く晴れた空で

世界中から文字が無くなった時だった

ページに印刷された文字が剥がれ落ちて

網戸を抜ける緩い風は埃の様に扱う

悲しい顔を私はするのだけど言葉には出来なかった

君は世界に言葉の壁が無くなる事を願っていたね

だけど皆平等になったかと言うとそうじゃないみたい

今日も誰かが殺されてるよ助けを呼ぶ事も出来ず


#3

溜池に潜り込んだ君は

夜の内側へと迷走してる

裏返した月並みにようこそ

肋骨で地を這う人骨が居て

電柱は木の様に細かく生えていた

苔の様な雲が明け方の様な薄暗い空を漂う

道端で炎が交尾をしていた

君はそれを渦巻く道路で眺めてた

火の粉が沢山産まれたよ

君は私を探しているんだけど

私はあなたが飛び込んだ溜池に変形してしまっていて

もう一緒に帰れない


#4

色まで融けて 式の字は書かれても消える 刹那

輪の弧 生えぬ鉄 淡く焦げた瞳の振動

電気の宣伝に収縮して答える

契れたトンネルに 咲いてるガードレール

蜂の燃え出す瞬間 海が降った四月を繰り返す街

通り魔は土星の輪廻で包丁を振り回してる

通報は左折して鋏で途絶えた

梨の香りがする洗濯機

漂白剤を入れて起動させれば

日差しが皮膚を突き破る朝が出来る

蝋燭の昨日は朝日に熔けだした

延命する氷に 明るい深海の潜水艦は呼吸する

誰もが濃く語ろうとする

心理水槽の磁器は重なり突き放す

貰う鯉は 弱った扇子の尾ビレを扇いでた

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