秋化粧を歩く

林は君の様に女性だと思う

季節が変わる事に

それにちなんだ化粧をして

僕を向かえてくれる

秋は随分と凝っていると感じる

君は恥ずかしいからするけど

林は何を隠すのだろう

今こうして紅葉の地を歩く二人の行方と軌跡


やっぱりもう冷え込んでいる

僕は冷え症だから手袋が必要で

包む外側から握る手の感触を確かめる

君は煙草を吸いたがるけど

辺りを見回して取り出した煙草を

右ポッケに再びしまう

それでも奥に進むに連れて

息は姿を現すから

それなりの雰囲気になっている

落ち葉はまだ渇いてはいなく

踏み込む音を土が吸い込む

有りっ丈の会話も景色が進む程見とれて


真ん中に切られた大木が有り

疎外する様に樹々は生えていなかった

君は腰掛けて落ち葉をブーツで払いのけ

ゆっくりと煙草を吹す

同じ顔をする林を君は眺める

僕は見渡しの良い空を眺める

曇り空の青い所が丁度通過する所

止まった様な此所を雲は流れて行く

僕達の帰路を辿る様に

僕達の帰路を辿る様に

紅葉が濃い此所は

信号なら立ち止まって正しいんだ

この先の禿た天辺を目指さず

戯れていたいのさ

意味も無く落ち葉を頭からかけて

驚くも直ぐ笑う君の顔が

夏の顔を覗く様で少しばかり切ないけど

何時までもそうであって欲しいと

僕は薄く微笑んだ


夕方に黄昏てしまわぬよう

僕らは帰路を目指す事にした

僕らが此所に来た行方も軌跡も残らないけど

有り触れた一日として忘れられても

構わないなと僕は思うのだった

だって秋は一時を隠すのだもの

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